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若紫誕生: 光る君へ 34回「目覚め」①

 光る君へ 34回「目覚め」の感想
 ——と言えるかどうか、ちょっとわかりません。

 ドラマ本編で今回最も注目したのは(いろんな〝目覚め〟がある中でも)彰子さんなんですけども。
 
 しかしながら今回は個人的に、あるシーンにガシッと心臓を掴まれてしまい、それが頭から離れないもんですから、まずはそれについて書きたいと思います。

 今回はドラマの感想からはズレると思います。
 おまけに、史実とドラマとフィクションの境目があやふやな話になりますが、お付き合いいただけましたら幸いです。

 何に心臓を掴まれたかというと、ついにきた! 源氏物語のもう一人の主人公、紫の上の誕生です!

 源氏物語の主人公はご存知、光る君(光源氏)ですが、彼の「一の人」(いちばんに愛されている人)である紫の上もまた、もう一人の、物語の主人公だと言われます。
 当時は「紫の物語」と呼ばれていたという記録もあるそうで。

 源氏と紫の上の出会いのとき、源氏18歳、紫の君は10歳。
 
 34回のドラマでは、まひろちゃんが、匂欄こうらんに止まるスズメを見、現実なのか幻想なのか、幼い女の子がそれを追っていくのを見ているというシーンがありました。

 そのときまひろちゃんが考えていたのは、「もうひとつの、あり得た人生」のこと。
 前回道長さんから贈られた檜扇を開き、あの絵を見て。

「あの(出会いの)幼い日から 恋しいあの人のそばで
 ずっとずっと一緒に生きていられたら
 いったいどんな人生だっただろう……」

 そんな思いに耽っていたのですね。

 もし、そんな人生が送れたとしたら………

 紫の君(結婚前は紫の君と呼ばれる)は、母を亡くし、父親には他に家庭があるのでいないも同然、唯一の保護者だった祖母を亡くし、天涯孤独となったときに、源氏に出逢います。
 そのまま源氏に拉致されて(ひでえ💧)、源氏が紫の君を養育します。

 源氏を自分の親とも兄とも慕って、彼女は成長していくのですね。
 そうやって、4年後には源氏の妻となり。
 生涯を共に過ごして、37歳で大病をし、43歳で亡くなります。
 彼女にとっては源氏なしの人生はあり得ないものでした。

 まひろちゃん自身は、恋しい人とは寄り添うことさえできず、過ごしています。
 幼いあの日からずっと、恋しい人と過ごしたらどんな人生になっていたかと、憧れと悔恨、両方の想いがあったでしょう。

 単純に考えれば、ここまでの深いご縁の「運命の人」と、支障もなく、幼い頃から当たり前にそのまま夫婦になって添い遂げたなら、幸せそのものと思えるでしょうが。
(夕霧と雲居の雁がこのパターンかな)

 わたしが、「うーん」と唸ってしまったのは。

 そうやってまひろちゃん自身の満たされない思い、果てしない憧れ、苦い悔恨、何より愛しい思いから着想されたのが紫の上だとしたら、そこに現れた物語は、あまりに悲惨ではないか、と思ったからでした。

 王子様とお姫様は結婚して、いつまでも幸せに暮らしましたとさ………とはならんのです、源氏物語は。

 まひろちゃんの憧れから着想された物語なんですから、幸せいっぱいであってもいいはずです。
 けれども実際に描かれたものはそうではない。

 紫の上は確かに源氏の「一の人」つまり「いちばんに愛されている人」であり、世間からもそう思われ、事実上の正妻扱いではあるのですが、実際には正妻ではない。

 正妻は「北の方」と呼ばれますが、紫の上はそうは呼ばれない。
 正妻が住む館は「寝殿しんでん」ですが、紫の上は生涯一度も、ここには住まうことはなかった。

 幼いときは二条院の西のたいで暮らし、
 六条院では「春の町」に住む。

 もちろん六条院に寝殿がないわけがない。
 寝殿に住んだのは、女三の宮と、明石の姫君だけです。
 いちばんに愛されている人でありながら、源氏は紫の上にはこの場所を許さなかった。

 いちばんに愛されているとは言っても、生涯、光る君の女性遍歴には悩まされ。
 歳をとって、落ち着いてやっと暮らしていけると安心した矢先、源氏は女三の宮と結婚してしまう。
 事実上の正妻という立場も根こそぎ奪われたわけです。

 紫の上は源氏の仕打ちに心底傷つき、出家を願い出るようになります。
 事実上の「離婚願い」ですね。

 しかし源氏は、紫の上から何もかもを奪っておきながら、離婚の願いもまた、聞き入れない。

 ひでえ野郎ですよ実際。
 この男がいう「愛している」とはなんだったのでしょうか。

 傷つき切った紫の上は、力尽きて、ある秋の夜明けごろに、息を引き取ることになります。

いにしへの 秋の夕べの恋しきに いまはと見えし あけぐれの夢

源氏物語 「御法」

 これが。

「幼い頃からずっと好きな人と添い遂げることができたら……」
 との思いを込めて、まひろちゃんが思い描いた物語の結末なのだとしたら。

 なんという愛の姿だろう。

 なんという虚しさだろう。

 そのように思って、ドラマ視聴中にも関わらず、わたしの脳内はしばし、お通夜状態になっていたのでした。
 何をやってんでしょうかねわたしも(笑)

 ドラマのまひろちゃんと、史実としての源氏物語を同列に並べて夢想しているので、我ながら、変な話になっております。
 史実の紫式部がそんなことで描いた物語ではあるまい、と思うと、自分でも「しっかりしろ」と言いたくなります(笑)

 自分の憧れを込めたとするなら、紫の上の物語はなかなか悲惨だなあ……などと思っちゃったのがいかんかったですね。

「光る君へ」の道長さんは、とりあえず藤壺に行けばまひろちゃんに会える、もしくは垣間見くらいはできる、以前よりもずっと身近であるということが、なんだか楽しそうに見えますね。

 女房がたの間では変なふうに噂になっているようですが、事実は詮索するより奇なり、ってことで、実際の、まひろちゃんと道長さんの関わりの歴史を聞いたら、それこそ作り話じゃないのかと言いそうです。

 ということで今回は、ドラマの感想というよりも、ドラマを見て、源氏物語について以前からうっすら考えていたことが吹き出してしまったという、妙なお話になりました。

 もうちょっとまともな感想も次回には書きたいと思っております。
 本日は失礼いたしました。

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みずはら
筆で身を立てることを遠い目標にして蝸牛🐌よりもゆっくりですが、当社比で頑張っております☺️

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