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元気の前借り

今日のお品書きはこちら
・6月は栄養ドリンクで元気の前借り
・吸う、もむ、こねる、噛みつかれる
・ねこおばさん爆誕

6月は小説の新人賞に向けて、毎晩子どもの寝かしつけ後にPCで作業していた。夫が今とても忙しく、家事育児の負担がいつもより少し大きい。夕飯作り、食事の準備、風呂、歯磨き、ドライヤー、寝かしつけ、食洗機に皿をぶち込む、水筒用のお茶を作る、ゴミ出し、などなど…必ずやるべきことを全て終えた後に、やっと小説の作業に入れる。

家事育児で通常よりハードワークしたうえで、深夜まで書き物をする日々を過ごしていると、さすがに後半は元気がなくなってきた。特に〆切一週間前から、昼間の足取りがふらふらするようになった。

そうしてとうとう、禁断の栄養ドリンクに手を出す。ちなみにわたしの好きな栄養ドリンクはチョコラBBローヤル2である。コンビニにはたいてい、チョコラBBシリーズの瓶が3種類は置いてあるけれど、何よりもかによりもチョコラBBローヤル2である。このピンクの蓋付きの瓶と出会ったのは妊娠して毎日ゲロゲロしていた時期で、ネットで悪阻にきくと書いてて藁にもすがる思いで購入した。多少効いた気がする。多少。ちょっと気持ち悪さが減った気がする。ちょっと。カフェイン入ってるから気になる人はやめたほうがいい。わたしは結局日々ゲロを吐いていたので、気にせず飲んでいた。

実際には悪阻時期に一番世話になったのはオレンジジュースだった。嘔吐が楽になるのだ。うっ吐きそう…となったときにすかさずオレンジジュースを1杯飲んで、少しこう、身体をぐるぐるまわして、胃の中で内容物と撹拌させる。で、トイレへ行く。すると、ばーーっと、わーーーっと噴水みたいに嘔吐した後、なんだか爽やか。すっきり。オレンジジュースで最強を感じた。吐くためにオレンジジュースを飲むのは忍びなかったけど、背に腹は代えられない。世界で一番最初にオレンジをしぼって飲んでみようかなと思った人は天才である。

妊娠中、チョコラBBローヤル2を飲んで気持ち悪さに耐えるわたしを見た夫は、産後もわたしが仕事でしんどそうにしていると、チョコラBBローヤル2を買ってきてくれるようになった。そういうときはたいてい、夫もふらふらしているのだけど、わざわざコンビニでそういうものを買ってきてくれるのは本当にありがたい。だってもうそこしか縋れる先がないのである。

しかし、ここまで栄養ドリンクを賛えるわたしでも、それを常用することは避けている。理由はサラリーマン時代にさかのぼる。

わたしがぴちぴちの、ぱっつんぱっつんの新人だった頃、会社は大変に忙しかった。わたしは悲しいことに仕事ができないマンだった。そのため、忙しい冬の時期は休日出社も含めて毎月100時間ほど残業していた。仕事ができないマンが残業をするのは会社にとってすごくコストなのだけど、みんな忙しいのでやるしかない。最大で月130時間残業していて、その頃、日付は当然のように会社でまたぐものだった。金曜日は社内の公開予定表に「ヨシヒコが始まる前に帰りたい!」と書いていた。すごく頑張って23時45分に会社をチャリで飛び出して帰宅していた。それくらい、深夜0時をデスクで迎えるのは当たり前であった。

そんな調子なので日々なんらかの栄養ドリンクをナチュラルローソンで買って飲んでいた。ナチュラルが聞いて呆れる。

ある日、デスクでリポDを飲むわたしに先輩は言った。

「高柳。栄養ドリンクは”元気の前借り”だから、飲み過ぎたらダメだよ」

元気の前借り、ですか?

その意味がわかったのは栄養ドリンクを1週間飲み続けた後、仕事に余裕ができた日だった。余裕があるから栄養ドリンクは不要、のはずなのだけど、だるい。すんごいだるい。栄養ドリンクがほしい。おかしい。忙しくなる前の、栄養ドリンクを全く飲んでなかった日々より何倍もしんどい。

これが元気の前借り…

気づいてすぐ先輩に「元気の前借りを感じています…」と報告すると「わかる。すごいだるいよね」とねぎらってくれた。ねぎらってくれる先輩も目の下のくまがすんごいことになっていた。

栄養ドリンクを飲むとすごく元気になった気がするけど、実際には何もパワーは増えてない。元気になった気がして、枯渇しそうなパワーをかえりみることなく、すっからかんになるまで使い果たすようになるだけだ。つまり幼児だ。HPが0になるまで全力で活動するのは幼児だ。

かくして一週間の元気の前借りによって、幼児のごとくHPを消費し続けたわたしです。だるだる。もう半年くらいは飲みたくない。一週間も飲んだから、今後一週間は借金生活をしているようなもんだ。

その点、ねこは副作用のない栄養ドリンクと言える。吸う、もむ、こねる、噛みつかれる。すべてが癒しになるので例え高級なご飯を食べた直後にゲロゲロされても、急な通院で数万円がぽーんとトんでいっても、日々の癒し代をお支払いしているだけである。ねこを吸うと、このようにポジティブになれるので、みんなねこを吸ったらいい。

敷金がたんまりかかるペット可物件、快適な寝床(それはしばしば人間にとって都合が悪い。たたんだばかりのTシャツの上、仕事用のイスなど)、飼育数以上のトイレ(うちは3匹に4つトイレがある)、壁で爪をとがれても「ドーゾドーゾ」と言える強い心(つまりお金)があれば、ねこを迎えられる。ちなみにわたしはまだヒヨッコなので壁で爪をとがれたときには「賃貸なのでやめてください!」と懇願している。

このままではどの町の近所にもいる”ねこおばさん”になってしまうのでそれは避けたい、と思っているけれど、広いところに引っ越したら、もう一匹お迎えしようと思っている。早めが肝心だと思い、近所のかわいい野良ねこに「うちの子になりませんか」とお声がけしているが、よい返事はない。夫には「ちょっとまだ勧誘しないで」と叱られた。根回しってやつだよ会社で習ったよ?そう、これがねこおばさん爆誕の瞬間である。

爆誕したのでもう寝ます。

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有料の日記マガジンを開始しようと思って、とりあえず練習です。5本たまったらマガジンにして、もっといっぱいたまったら紙の本にします。日記は読んでも何も役立たないし、有料ならかなりオープンに書けるので。

サポートは3匹の猫の爪とぎか本の購入費用にします。