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11匹のねこ(4月26日)

朝、ケンカする子どもらをうまく送り出せなかった。もっと優しくすればよかったし、長靴をはかせればよかった。あーあ。すごい大雨。

大雨の中、夫に車で職場に送ってもらう。夫は普段わたしが通るのと違う道を進んだから、いつもの汽水域は見られなかった代わりに、田んぼの真ん中に飼われているヤギたちを見られた。ヤギは大きな丸い筒の中や、ヤギのための遊具の下に隠れていた。ヤギも雨が嫌いなんだ、と思った。そして、いつか見た夢のことを思い出す。

そこはおばあちゃんちの前だった。小学校を建築する会社に建ててもらったらしい、白壁の堅牢な二階建て。
普段はキッチンと居間のそばにある勝手口から入るけど、お正月やお盆など、ちゃんとしたときに使う玄関の前にいたから、ぴかぴかの金属でできた玄関の縦長いドアノブをひっぱった。がっちょん、と音を立てて中へ入る。右には開けたことのない靴箱があって、その上に龍が玉をくわえている様子の木彫りがある。多分じいちゃんが買ったんだろう。ニスの塗られたすべすべの木彫り。玄関マットもきっと、じいちゃんの海外土産。赤色を基調とした織物で、いつもふわふわとしている。ばあちゃんはほんとにそこらへんにいそうなばあちゃんだけど、家の床はいつもぴかぴかで、ほこりが落ちてるのを見たことがない。頻繁に掃除機をかけてるのかな。
ばあちゃんちで最初に会ったのは高校の友だちだった。ゆうちゃんとパージャ。そこに中学の同級生、さくじい。あとはもう思い出せない。何人もの過去の同級生がそこにいた。誰のことも好きだった気がした。ときおり、がっちょん、と音をたてて誰かが入ってきた。玄関前の階段から二階へ行くとそこはもうばあちゃんちではなくてわたしの実家で、自分の部屋にはいると窓の外に誰かがぶら下がって揺れている。カーテン越しの光でそれがわかる。カーテンを開けなくちゃ、と思って目が覚める。

渋滞してたけどどうにか職場についた。車から降りて、傘をさした。こないだ買った11匹のねこの傘。かわいいけど多分、すぐ壊れそうに弱い、びよびよした骨をなでる。けど、風で折れない柔らかさもある気がする。こういうのを、しなやか、というのかも。

今日はちょっとだけ遅刻した。


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