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つばめ(4月27日)

お昼に何を食べるかと、つばめについて考えた日。

今日は職場の人と予定していたランチに行く。カンカン照りの中、着ていた作業着を頭からかぶって歩いた。ほっかむり、じゃないけど、ああいうのなんていうんだろう、江戸時代とかに傘がない人がやってる服装というか、ポージング?分かんない言葉が多いや。
徒歩で10分の定食屋さんに行く途中、酒屋が気になった。酒饅頭が大好きで、と同僚に話すと、じゃあ帰りによりましょう、と言われてうなずいた。さらに道を進むと、雑貨屋さんを見つけた。風見鶏のかもめ版とでも言ったらいいのか、正式名称がわからない木製のあれがあった。風に乗ったかもめが店の前で腕をぐるぐる回してて、再び、帰りによりましょう、と話した。寄り道の予定が増えてく。

定食屋では悩みに悩んで、しつこいくらい悩んでカツとじ定食を食べた。カツもご飯もおいしくてすごいボリュームなのに、食べ終わった後に全然苦しくなかった。同僚はわたしより小柄で華奢なのにわたしよりたくさんご飯を食べて、そして「全然苦しくない」と言うので「なんでですかね」「いい油なんですかね」「いやこんな田舎の安い定食屋でいい油使いますかね」と話した。次来たらちゃんぽんを食べたい。

店を出たところで寄り道を思い出して雑貨屋に入る。
出るときには手に紙袋を下げてて、中にはVictorの犬の置物が入っていた。買ってしまった。レコードに耳を傾けてるぽい犬の陶器の置物。片手で持つには若干不安なサイズ。喜びが深い。

さらなる寄り道で酒屋へ行く。酒まんじゅうを試食して、蒸したての甘さと日本酒の香りがすごすぎて5個も買った。次は甘酒のソフトクリームを食べるんだと決めた。

帰り道、自然豊かな住宅街のそれぞれの庭をのぞく。全体的に塀が低く、土地をどーんと使ってかわいいお庭が広がる。赤ちゃんかたつむりのいる壁に喜び、とおりかかった三毛猫のしなしな歩く姿に「最高」と言い合う。「これ観光ですね」「昼休みなのにね」と紙袋を手に歩いた。背景の緑が濃い。

ふいにつばめが横切った。職場で一番ビル風の強い空間を楕円を描いて飛ぶ。「最高」と言い合う。「つばめがうちに巣を作ったら最高ですね」「フンとか差し引いても最高」「どうしたらつばめが巣を作ってくれるんですかね」つばめに来てほしくてたまらない30代女性二人でその後、つばめについて調べた。つばめの移動距離に「まじか」「やば」を繰り返し、更に移動距離が一番長い鳥(キョクアジサシだったか)について調べて「うっわ」と声をもらす。部屋には同僚とわたし二人しかおらず、パーテーション越しにつばめや鳥について話し続けた。こんなにつばめについて考えることがあったか。

去年建てた自宅はほぼ直方体で、玄関の外にちいさなひさしはあるけど他には壁しかない。これじゃつばめの巣ができないな、とがっかりした。人工の巣を作って良い位置に取り付けた人のブログも読んだけど、うちでは難しそうだった。つばめは呼べないけど、近所に来るかささぎをかわいがることにする。あとすずめ。

食事中、マスクを外した同僚の顔を見て不思議な気持ちになった。1年後には同じ職場にはいないかもしれない。そんな人とマスクを外してご飯を食べてる。あまり深く互いの家庭については聞かないけど、つばめとか、クックパッドにのってたレシピとか、インスタがどうとか嫌いな芸人とか、そういうことについて話す人。敬語とタメ口が混ざり合う関係。この人が職場を去っても、また会う日は来るんだろうか、と思う。

来ない気がする、と思っておくことにした。


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