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海から来ました。(エッセイ)

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エッセイと写真。
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#子育て

おとこをみつけた

仕事を終えて、保育園に向かって歩く。迷わず海沿いへ続くドアに手をかけた。足取りは軽い。晴れているけどそう暑くもない。眼前の海の湿った存在感に反して、髪をすすぐように向かってくる風はさわやかだった。 いつもより少し早く迎えに来ただけなのに、わたしの顔を見た双子は「おかーちゃん!」と跳ねて喜んだ。 靴をはいてリュックをしょった二人は、園庭で、上手になったという鉄棒の技を披露してくれる。「見て!ほら!」という声も表情も、わたしを安心させる。二人がこの園に入れてよかったと何度も思

どーなつを食べたら

子どもがかわいい、となかなか思えない。 道行く子どもはかわいい、道行く犬も猫も、ゆっくり海辺を歩くおじいちゃんもおばあちゃんも、かわいい。でも、自分の子どもをかわいいと感じることがない。それが今年に入ってからのわたしの悩みだった。 造形はかわいいと思う。動きも様子も。けれど、2歳になった頃から子どもの存在をかわいいと感じられなくなって、変だなと思ってた。そして先週やっとわかった。子どもといると痛いのだ。子どもと接すれば接するほど自分の人間としての至らなさ、過ち、心の狭

伏せたまつ毛の

初めて何かを体験する、というとき。その瞬間の眼差しの美しさを昨日感じた。 わたしには3歳の双子のむすめがいる。喋り、考え、泣いて、踊る。そういう二人の子どもがいる。昨日はお迎えに行った帰りにいつも一個だけ食べるグミが切れてしまい、コンビニへ行った。 コンビニへ子どもを連れていくのは、少し億劫だ。まず、車から二人の子どもを降ろすのが最初の手間だ。チャイルドシートのシートベルトは冷え切った手には固い。ドアの外から「おりといで」と言ってもすぐに降りてこないことも多い。運転席の横

近距離恋愛(双子版)

三歳四ヶ月の双子が、揃って赤ちゃん返りをしている。 具体的には、「お着替えできない」「お姉さんパンツはかない、オムツはく」など、できていたことをできないと言う状態。更に、赤ちゃんのような態度をとる。わたしのお腹やおっぱいを触り、にやにやする。階段で二人同時に抱っこを求められ「階段で二人とも抱っこするとこけちゃうよ。階段終わってからね」と言うと、二人揃ってマンションの階段で大声で喚いた。 赤ちゃん返りが始まって一ヶ月ほど、わたしは二人の態度を受け入れることができなかった。「