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海から来ました。(エッセイ)

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エッセイと写真。
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#死

生きてるみたいに、死んでるひと

死んだように生きる、って言葉があるけど、生きるように死んでる、ってこともあるよな、とふと思った。 わたしの記憶には、まさかもうこの世にいないとは思えない人がひとりいる。頭の中には生きてる彼女がいて、いつも静かで、体育の授業のバレーボールではレシーブが下手すぎて空気が固まるほどで、白い肌と空気に透けそうな茶髪がかわいくて、白い花に囲まれてそうな小柄な女の子で。いつも少しだけ笑って、そしてうつむいていた。彼女とわたしは同じ高校の隣のクラスにいて、体育の授業で一緒になるだけで、な

いつかうつわになる日

寒くなった。実家の犬が死んだ。 それだけなんだけど、しぼんでいる。夫がわたしの好きなお店でのランチを提案してくれたり、いつもなら頼まないデザートを頼めば?と言ってくれたり、なんとなしにとても優しくて、わたしが好きなアイスを買ってくれて、折に触れてスタバにでも行こうかと言ってくれて、ああもう早く元気になりたい、と思う。 とても普通に、自然に、わたしは毎日笑う。友達に会って、猫に背中に乗られて、双子がふざけて、毎日笑う。でもなんか違う。ちょっと違う。筋トレの習慣がパッタリと消え