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海から来ました。(エッセイ)

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エッセイと写真。
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2020年3月の記事一覧

こういうの、ないですか。そうですか。

歩幅が違うことってないですか。ないですかね。 どれだけ互いを知っている相手でも、歩幅が違っていては同じ景色を見ることができなくて、もどかしくなったりして。 時間の経過や人生のフェーズの変化で人と離れたり近づいたりすることって、ごく自然なことだと思うのだけど、今はそれがさびしくて、そんな自分を悲しいなと思ったりもする。 ちょっとした言葉にその人の態度が出るように思われて、言葉尻が気に食わなくて、難癖をつけたくて、思春期の朝のように敏感になってる。そのくせ今とてもさびしくて

愛さざるをえないひとよ

ああ、想像よりも、かわいい声のひと。 わたしが彼女にもった第一印象は、声だ。 彼女とわたしはその日、知り合って初めてお喋りをしていた。知人の紹介で「お話しませんか?」と声をかけてくれた彼女のことはわたしも元々知っていた。ドイツにいること。雑誌の取材を受けるような、自分らしいお仕事のスタイルを持っていること。写真で見た、お人形さんのような薄い色素の肌と、ほほのえくぼ。 スピーカーからゆるやかな弧を描いて耳に、そして頭の中に彼女の声が届く。わたしたちは日本とドイツという超遠