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海から来ました。(エッセイ)

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エッセイと写真。
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2018年10月の記事一覧

怨念と修造

「あんたがいいならいいけど。わたしは全然いいと思うけど」 わたしが決めたことに対して、母はたいてい語尾に「けど」をつけて発言を濁らせる。そんなときの表情は硬い。母は軽いノリを出そうとしているのか、気持ち高めの声ですらすらと話すのだけど、わたしはもう何と言っていいかわからなくなる。 最近までこの濁した言葉が嫌だった。本音があるなら言ってくれと思っていた。十代の頃は腹立たしく思いながら何度も前向きな決意や報告を重ね、そして変わらず言葉を濁されて、勝手にしょぼくれていた。言いた