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Billboard Top100を振り返る    1980 2nd Pink Floyd 'Another Wall in The Wall Part-2'

さてさて、1980年の2位はPink Floydの'Another Brick In The Wall Part-2'なんです。今まで1980年のチャートを振り返ってきましたが、ジャンルとかの傾向としては、かなり異質な曲とミュージシャンがこんな上位に入っているんです。これはね、かなりの大事件だと思うんです。

そう、この曲がなぜ、ここまで売れたのか、この点はロックの歴史の中でも、もっと話題になってもいいのではないかと思うんですよ。

Pink Floydといえば、サイケデリック、プログレ畑の大物ですけれど、1970年代には'The Dark Side Of The Moon'というとんでもないヒット作がありますが、アルバムオリエンテッドなんで、ここまでシングルがヒットするなんて誰も思っていないと思うんですよね。

しかもね、Billboradだから、市場はアメリカですよ。普段カントリーとかR&Bとか、やはり保守的な曲が多い中で、2位にこれですからね。1980年に急にアメリカ人の方々が、プログレや哲学的な問題意識に目覚めたのでしょうか。

この作品自体は、個人に対する社会の圧力、圧制がテーマなんですが、その個人も、レンガの一つとしてその壁の中に存在してるんだぜ、っていうのが、このコンセプトの特徴です。そう、あなたも体制側にいるんだぜっていうことなのでしょうが、これって、リバイアサン的な社会の捉え方ですよね。

この考え方も民主主義の体制の一つなのでしょうが、個人として、社会に存在する、その社会の在り方に協力する、とすると、その中では個人の自由というのは、どういった扱いになるんでしょうかね。時は1970年代の後半ですよ。確かに不景気が続き、ベトナム戦争などの後遺症で社会的な繁栄に疑問が提示された時だと思います。そんななかで、確かにPink Floydの問題提起に大きな意義はあると思いますが、でも、ここまでヒットするかな、と思うわけです。何せ、相手は陽気なアメリカンですもんね。

一つありうるのは、カレッジチャートの存在ですね。1978年ごろから、各大学キャンパス内の独自チャートをアメリカ全土でまとめていくという取り組みが出てきたようです。でも、このカレッジチャートでヒットしたとしても、何でこの曲だけ?って感じもしますね。もっと多くの曲やミュージシャンが、カレッジチャート経由で有名になっていてもおかしくないと思うんですけれど、そうじゃないんですよね。

この曲がこの時代にここまでヒットしたことに対しては、ほかの要因があるのだとは思いますけれど、そこを掴みたいとは思いますね。ただここで言えるのは、1980年のアメリカにも、Discoといった流行に流される面はありながらも、こうした硬派の曲が受け入れられる土壌があった、ということです。

この点も、1980年以降のロックの隆盛につながっていくのでしょう。

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