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成長企業のための令和6年度税制改正の概要

令和6年度税制改正大綱において「スタートアップ・エコシステムの抜本的強化のための措置を講ずる」と記載されていることなどからもわかるように、令和6年度税制改正は成長企業にとって有利な税制改正が盛り込まれています。
この記事では、令和6年度税制改正大綱に記載された、成長企業の経営者や経理部門の従業員に把握しておいていただきたい改正論点を3つ紹介いたします。


1.賃上げ促進税制

・給与等支給額の増加額の最大45%を税額控除できるようになる。
・中小企業であれば控除しきれなかった金額を5年間繰り越せるようになる。

賃上げ促進税制については、ここ数年賃上げを後押しするための改正が行われていますが、令和6年度において制度がより強化されます。

具体的には、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%(改正前40%)を法人税額から控除することができるようになります(ただし、控除上限額は法人税額等の20%です。)。
適用期間は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度です。例えば9月決算の会社であれば、令和6年10月1日から令和7年9月30日までの事業年度からです。
また、中小企業においては、要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額について、5年間の繰越しが可能となります。

成長企業においては従業員数が増加し、前年よりも多くの給与を支払っていることが多いかと思います。また、いわゆるスタートアップ企業においては、前年比で給与の支払額が増えているものの、先行投資の結果赤字となり法人税額が発生せず、賃上げ促進税制を適用することができないケースがありました。
このような企業にとって良い改正であると考えられます。

2.交際費

2024年4月1日以後の飲食費については、1人当たり10,000円以下であれば、税務上交際費とはならず損金になる。

飲食費をはじめとした交際費については、損金算入限度額が設けられており、基本的に年間800万円とされています(資本金の額によります)。
また、交際費のうち飲食費については、1人当たり5,000円以下であれば交際費とはならず経費(損金)になるといったルールを聞いたことのあるの方は少なくないかと思います。

この金額基準が5,000円から10,000円に改正されます。2024年4月1日以後の飲食費について適用することとされています。
つまり、2024年4月1日以後の飲食費については、1人当たり10,000円以下であれば、税務上交際費とはならず損金になります。

新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行され、対面での飲食の機会が増えています。とりわけ成長企業においては、経営者や営業部門の方の会食の機会が増えていると思われます。
金額基準が増額され、損金算入されやすくなったことは成長企業にとって良い改正であると考えられます。

3.税制適格ストックオプション

・権利行使価額の上限が最大で年間3,600万円になる。
・一定の要件を満たせば株式の保管委託は不要になる。

IPOやM&Aを想定している会社等に関係のある改正です。
ストックオプションのうち、税制適格ストックオプションの要件に関して、主に以下の点が改正されます。適用時期は大綱に記載がありませんが、自民党の小林史明議員のツイート(ポスト)によれば令和6年4月の適用を目指すとのことです。

改正前
①権利行使価額 年間1,200万円が上限
②権利行使により取得する株式について、証券会社等に保管を委託すること

改正後
権利行使価額 最大で年間3,600万円が上限
②譲渡制限株式であるなど一定の要件を満たせば、株式の保管委託は不要

特に②について、スタートアップ企業の出口戦略として、IPOではなくM&Aを選択することとなった場合にも、改正前は保管委託が求められ、金銭的なコストや時間、手続負担を要することから円滑なM&Aの阻害要因となっているとの声がありました。
②の改正が行われることでこの課題が解決しますし、結果としてIPOではなくM&Aを前提とした起業やそのような企業による採用もしやすくなるのではないかと考えられます。

4.終わりに

令和6年度税制改正について、成長企業に関係のある改正論点の概要を3点ご紹介しました。この記事は令和6年度税制改正大綱等、令和6年2月現在公表されている情報等に基づき執筆しましたので、改正法の成立後における制度の内容や適用時期については、顧問税理士の方に確認されることをおすすめいたします。

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