ちょちょら組・駄洒落の効能
「こくら(小倉)優子」
昼飯のときに、旅先の「小倉」と、当時離婚裁判のニュースに出ていた「小倉優子」をかけた駄洒落をぼそっとつぶやきた。
本当にくだらないと我ながら思うのだが、この罪のない駄洒落は、ハマるとくすっとくる。間が良かったのだろう。
ぽん太「兄さん、もう少し茶碗(ちゃんと)として」
信楽「楊枝(用事)ないなら黙ってて下さいよ」
かしめ「みなさん、意味のない駄洒落は酒(避け)るように」
みないっせいに、食卓に使うものから連想して矢継ぎ早に駄洒落てくる。
こうしてちょちょら組、地獄の駄洒落ノリが幕を開けた。
一応、噺家のはしくれだけあって、言葉だけはすらすらでてしまう。日常会話に飽きがくると駄洒落の始まりで、この伊勢滞在期間中にもくだらない言葉遊びは留まることを知らない。
山田旅館にて
「障子(正直)き言って良いとこですね」
「駄洒落たたみ(畳)かけてきますね」
「このうつけ者(漬物)が」
「兄さんにはカーテン(勝てん)な」
「昨日言ったこと憶えてないの?超ショック(朝食)」
「筑前煮に(直前に)頼んですいません」
「手羽先(柴崎)コウ」
伊勢神宮、内宮・外宮にて
「神社(ジンジャー)エール」
「やったことないく(内宮)だりやりないで」
「あいつに聞く(菊)のが悪い」
「みんな弛ん(樽)でるよ」
「対抗(太鼓)勢力」
おかげ横丁にて
「うますぎてムース(申す)ことがない」
「相手は待っちゃ(抹茶)くれないよ」
「土産(見上げ)たものだなぁ」
「コースター(こうした)所に来るのは初めてですか」
夫婦岩にて
「岩(言わ)ないでね」
「旅館から夫婦(目と)鼻の先」
「ハマ(浜)ってる」
「忙(磯)しい」
「そろそろ東京が小石(恋しい)ね」
餃子・美鈴にて
「水餃子(水曜日)のカンパネラ」
「行くとしたら餃子(今日か)明日」
「ラー油(areyou)ready?」
唐揚げみながら「コメント鳥揚げ(取り上げ)ちゃうよ」
「あんまりサワー(騒)がないでね」
「テーバー(手羽)スイフト」
etc…
なにを記録しているのだろう。
この他にもひっきりなしに駄洒落は続く。
無駄に垂れ流してへらへらして東京に戻っても仕方ないので、記憶したぶんはここに書いてみたのだが、どうか伊勢市の方、怒らないでいただきたい。
信楽くんなぞは、「せっかく伊勢に来たから伊勢神宮の125社にかけて、125駄洒落に挑戦だ」と、朝食を摂りながら携帯にメモをとり始めたが、量が多すぎで飯が進まないというリスクを抱えてまで、このくだらない仕事に勤しんでいる。
これがちょちょら組なりのクリエイティブな活動のひとつなのだ。
ただ、呑みながら話すぶんには意外と罪がないのがこの駄洒落で、噺家に限らず同業者が集まると、自然と出てしまうのは業界の悪口と芸論だ。
前者は本当に意味がないし、後者は堅苦しい。
宴席なんてばかばかしいくらいがちょうど良い。
ただの言葉遊び、されど言葉遊び。
みなさまもぜひ試してみては。
気を付けるべき点は、笑いながら駄洒落を言わないことと、相手も笑いすぎないこと。
笑いながら駄洒落を言うと、「笑ってほしい」という意思を相手に押し付けるので、これでは「親父ギャグ」になってしまう。
あくまで品のある言葉遊びであるべきだ。
言われたら「う~む」と頷き即座に駄洒落でお返しする。
これが極意である。
「兄さん、noteで駄洒落のくだり書いてよ」と頼まれたので、ばかばしいことに真剣に向き合って書いてみました。
noteは言えない性格なので。
文・橘家文吾
ちょちょら組 落語家
橘家文吾 (Tachibanaya Bungo)
https://www.tachibanayabungo.com/
柳亭信楽 (Ryutei Shigaraki)
https://www.shigalucky.com/
三遊亭ぽん太 (Sanyutei Ponta)
https://pontathe2nd.amebaownd.com/
立川かしめ (Tatekawa Kashime)
https://peraichi.com/landing_pages/view/tatekawakashime/
【滞在期間】2022年11月7日〜11月13日
※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)