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<伊勢滞在記> 伊勢は、どこへ行っても神がいた (柊 有花)

はじめまして。
絵と言葉を仕事にしている、柊有花です。

石井ゆかりさんや瀬尾まいこさんの書籍の装画や紙雑貨のイラスト、イベントビジュアル、日本や台湾などでの個展開催などを行っています。
伊勢でワーケーション参加者を募集していると知り、2週間の滞在を通じて、今後の作品制作につながる体験ができればと参加することにしました。

外宮に近い宿に滞在し、「旅」というよりは「生活する」という感覚で伊勢で過ごしました。その中で印象に残った場所をご紹介します。

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朔日参りで訪れた、まだほとんど夜のなかにある内宮。

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内宮の入り口にはたくさんのひとが集まっていた。鳥居からのぼる太陽を写真に収めようと、山の向こうにうっすら見える光が動くのをじっと待っている。次第に満ちてくる陽を見つめ、同じようにカメラに収めるひとたちの姿に心を打たれる。一千年以上のあいだ、人間や人間の服装は変わっても、同じように陽がのぼるのを繰り返し見つめている。そんな営みのなかにこそ、神さまがいるような気がしてならなかった。

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好天のなかの神宮徴古館。

伊勢神宮で用いられる衣服や調度品、またその歴史を描いた絵などが展示されている。どんなものが収められ、どんなことが行われているのか、その一部を垣間見ることができる、おもしろい展示だった。

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2度目の内宮は、昼の光があふれる。

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滞在中10個は食べたであろう、へんば餅。

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遊びにきてくれたねこちゃん。

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伊勢神宮の鬼門を守る金剛證寺。

山のなかにあることもあってひとも少なく、清浄な空気で満たされている。全体に力強さがあり、そこら中にうつくしさが宿っている。伊勢神宮の清らかな空気とはまた違う。この朝熊岳に卒塔婆を立てて弔うのは、"死者の霊魂は全く別の世界に行ってしまうわけではなく現実の山のなかに死者の霊が集まる「他界」があるというとらえ方(山中他界観)"があるからなのだそうだ。

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光あふれる伊勢和紙館。

自然光で紙のチェックをするそうで、工場は陽の光で明るく、清々しい。紙に光を織り込んでいるようだ。いたるところに紙垂(しで)が飾られていて、清浄な空間になっている。

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二見で買った貝と真珠のブローチ。

50年以上前に作られたものだそうで、ピンもさびている。ずっとこの店のショーケースのなかにあったものなのかもしれない、と思うと、二見に流れる時間の重みをずしっと感じた。

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近くに滞在していたこともあって、ほぼ毎日訪れるうちに親しみがわき、別れがたかった外宮。

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貸していただいた電動自転車。外宮から内宮へも気軽に行けるし、その道中にあるコメダ珈琲に寄るのも楽しい。

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歩いているあいだに見つけたたくさんの植物。

伊勢を離れてからすこしたちました。出会ったひととの会話や土地との出会いが手ごたえのあるものだったからこそ、いまそこから離れて別の場所で生活をしていることが不思議な感じです。実際、自宅に戻ったときに妙な感覚を覚え、現実感を取り戻すまでにすこし時間がかかりました。長く滞在できたからこそ、伊勢という土地に体がなじんでいたのだとそこで実感しました。

伊勢はどこへ行ってもつねに、ひとではない何かの存在をつよく意識させられるような特別な場所でした。まぶしい光と深い闇のコントラストが伊勢という場所を立体的に形作っているような。そこで暮らすなかで、わたしもたくさんのものを受け取った気がします。そこではぐくまれた新しい好奇心は、これからのわたしの暮らしと、創作活動につながっていくと感じます。

伊勢での滞在は得難い、すばらしい時間でした。お世話になったみなさん、本当にありがとうございました。

伊勢でのことを毎日日記につけていたので、もしよろしければこちらもご参考までにご覧ください。
https://note.com/yukahiiragi/m/mf4fb6b2d7e22


柊 有花(Hiiragi Yuka) イラストレーター
https://hiiragiyuka.tumblr.com/

【滞在期間】2020年11月30日〜12月12日

※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)