<伊勢滞在記>長谷川 寧、呉 勇寿、黒瀧 保士(Hasegawa Ney, Go Takehisa, Kurotaki Yasushi)

はじめまして。この度ワーケーションに参加させて頂く事になった冨士山アネットと申します。
普段はパフォーミングアーツを主に行う団体となりますが、この度は新作の参加型作品制作の為、伊勢に向かいました。およそ2週間の合間、クリエイターがどう過ごされているか気になる方もいらっしゃるかもしれないので、あくまで日誌として参加スタッフ陣が記してみました。どうぞ御覧下さい。

冨士山アネット制作部 冨士山家


11/25→11/26 東京ー伊勢day1

22:00過ぎに車で都内のファミリーレストランで落合い、打合。伊勢滞在中の目的やスケジュール等を仮組み。
00:30頃全員が合流し、車に3名分の機材と荷物を積込み、横浜青葉から東名高速に乗る。
伊勢近辺までは高速で一気に行けるが、高速を降りてからが伊勢への道のりは長い。2時間強は掛かり、朝方には車の自動音声にもそろそろ休みを取ってみては如何でしょう、と言われるていたらく。
そんなこんなで久々の長距離運転にて07:30過ぎに朝食を摂る。
09:00に作業をすべきスタジオに到着。株式会社サンシンさんの御好意により此処でおよそ2週間のレジデンスが始まる。伊勢市の公用車で今回の事業担当の立花さんに来て頂き色々説明を受ける。本当に1人で回しているそうで、その熱意に脱帽と感謝しきり。
株式会社サンシンさんの社長夫妻に御挨拶し、此処が元・日産のショールームだった、と話を聞き納得。大きなガラス張りは採光するのにとても良い。その後疲労した身体に鞭打ちセッティングを行う。
スタジオは広く、床がカーペットなので身体的には楽で有難い。
結果昼位には粗方組める。
今回はタブレットをいじりながらする参加型作品を考えているので、タブレットの設定を行いつつ、オペレーションソフトのテストと、伊勢まで来てすこぶるインドアな作品制作にはなる。ただ物を置きっ放しで充分な広さでクリエイションに取組める贅沢さたるや。
会場はガラス張りなだけに17時以降陽が落ちてから出ないと照明や映像がまるで太刀打ち出来ない事が判明。
明日以降の予定は此処で変更となる。
取敢えず厄介なオペレーションシステムと持込んだ照明の同期を色々トライし、本日は終了。
立花さんに作業用のTVモニターを持って来て貰う前に、皆でトレーニングをして待ち、本日リハーサルは18:00に終了。

夜はホテルにお薦めされた虎丸という蔵を改造した居酒屋に行くも、満席で予約無しでは入れず。
宇治山田駅まで歩くも中々店は見付からない。
結果ホテルに戻り、ホテルの下の居酒屋で遅い夕食。
部屋に戻ると身体が遂に活動限界を迎え着のみ着のままダウン。
長い1日だったが、初日としてはよかったのではないかと思う。明日の目標は、作品の為のディスカッションとオペレーションシステムの設定の続き。


11/27 伊勢day2

11:30にホテルキャッスルイン伊勢のフロントに集合し、車で稽古場へと向かう。
12:00過ぎに稽古場へ到着。当たり前だが、前日準備したまま稽古が進められることに大変助けられる。伊勢市観光局の立花さん、会場を提供してくださった株式会社サンシン工業の皆様に心から感謝。ありがとうございます。
稽古は次回作の内容についての話し合いから開始。
モチーフについて、長谷川、呉、黒瀧がどのように感じているのか、また、作品にする際に綻びを出さず、参加した観客がモチーフについて議論を膨らませるにはどのようにしたらよいかを話し合った。
次回作についての意見交換は本日の稽古が初めてであったため、よいアイデアは生まれたものの、具体的にどのようにするかは未だ決まらずである。ふんわりした感じで休憩に入ったが、よい時間であったし、明日以降も続けることになるであろう。
30分ほど休憩をした後、タブレット操作の実験へ。ここで残念ながら足踏みとなった。
ネット環境のよい場所で稽古をしたいと伊勢市に希望を出しており、現地で何かあってはとのことで、念のためルーターを持ってきてはいたが、接続できる挿し口が稽古場にはなかったため、ポケットWi-Fiを使用して実験に取り掛かることとなる。だが案の定、ネットの速度が遅い上、通信が途切れてしまう事態に。
観光局の立花さんに事情を説明し、サンシン工業の事務所内にある空いているLANコンセントをお借りすることに。有線LANケーブルを稽古場まで引っ張らせていただくことにしたが、LANケーブルの距離が足らず。兎に角稽古を進めたいため、必要な部材を注文し、稽古場に手配をさせていただくことにした。
タブレットの実験については、現状できる範囲のことに取組み、課題点をあげる。
ほとんど身体を動かさない稽古(作業)であるが、疲労が蓄積する内容であった。
明日の稽古は本日と同じ12:00頃からディスカッションを行う。


11/28 伊勢day3

11:30 ホテルロビー集合、数日来幾分気温下がる。
伊勢は空が広く、太陽の在不在を非常に強く感じる。
12:00 到着 セットアップ

技術的なディスカッションや演目の設定についてのディスカッション
→時間を区切って、いくつかのシチュエーションについて実地でシュミレーション

14:20〜14:45 休憩

14:45 LANケーブルコネクタ等到着、有線LANケーブルの結線作業を開始
窓用フラットケーブル+20mケーブル+20mケーブルのリレーでアトリエにてルーター起動成功
回線問題解決

黒瀧:オペレーションシステムのキュー仕込み(照明・音響のプログラム)
長谷川:タブレットでのスプリット画面表示の方法の模索
呉 :プロジェクターでの投影設営

17:50〜休憩
18:05 再開

オペレーションシステムの操作実習
→照明・音響・映像を投影
→映像のフェードがオペレーションシステムの上位ライセンスのみの扱いと判明

20時頃に終了

風が強い1日だった。


11/29 伊勢day4

この日は日中作業なり個人の時間に使う日。
ここまでやってきた分、少しはヴァケーションもしなきゃいけない。
実際はホテルに缶詰で作業だらけだけれども。
昼過ぎにオペレーションシステムのノウハウを熟知しているTさんに電話し皆で教えを乞う。
流石のマスター、的確な指示。
その後16:00に集合し、稽古場に向かう。

作品の内容はまだまだ話せない事だらけなのだが、ディスカッションの中で、
「魂はどこにある?」
という話になる。
これには

・ない
・身体
・脳
・クラウド

と色々アイデアが出て、そこからディスカッションは更に深まる。
参加者の価値観をどう揺さぶるべきか、という話になる。

その後オペレーションシステムのオペ練習へ。
本日は、「黒瀧、大分レベルアップする」の巻。
その言葉通り黒瀧がドンドンと習熟中。
機材に直接繋いでいるPCは黒瀧のみの為、長谷川は絶賛出遅れ中。

22:00終了。
台湾料理屋味仙は遅くまでやっていて便利。


11/30 伊勢day5

本日は11時にホテルのフロントに集合し、伊勢神宮とおかげ横丁へ。
伊勢ワーケーション5日目にして漸くの観光。天気にも恵まれ、ありがたい限り。
タクシーで伊勢神宮の外宮へ向かう最中、雲間からの陽光が美しく車内から撮影。

そうこうしている間に外宮に到着する。外宮へお参りする前に式年遷宮記念博物館のせんぐう館に寄ることにした。伊勢神宮へお参りの際は是非せんぐう館へ寄るのもお忘れなく。展示も空間も内容も素晴らしく、時間を忘れてしまうほど。
私は初めて伊勢神宮にお参りするのだが、まだお参りに訪れていない方、絶対に一度は訪れた方がよい。
空気が違う。

伊勢神宮に訪れる際、観光だけでなく作品についてのインタビューが行えればと長谷川からの提案があり、
インタビューも無事に行えた。
観光も仕事も行えて、充実した1日である。
夜の食事は26日に入れなかった虎丸へ。予約時に店員さんから、3名だったら17時~18時50分までなら予約が取れますとのこと。やはり人気店なのだろう。期待値が更に上がる。
伊勢神宮から一旦ホテルに戻り、お店に着いたのは17時30分頃。
石造りの蔵を改装した店内、天井が高いため広く感じる。こちらのお店は良いお魚が入荷できなかった日は休みにすると言う程お魚料理をオススメしているので、お魚を主として注文することに。
どれも外れが無く、最後の最後まで大変満足する美味しさだった。
これですよ!これが贅沢ってやつですよ!!と心の中で叫ぶほどである。
また伊勢に来たら必ず再訪しようと誓う。

今日は本当によい1日であった。


12/1 伊勢day6

2020年最後の1ヶ月に突入。
昨日神宮詣でで今日の今日だが、西洋占星術では今月下旬から800年ぶりに風の時代へと移り変わるそうだ。
その前回の変わり目にあった出来事は、源氏の三代将軍の死、チンギスハーンの死、承久の乱など。吹き止んだのだなぁと思う。
風が太陽によって起こる現象だとすると、伊勢の風が強い理由もまた、太陽にあるように思う。日の神がここに住まわれたいと言った土地の由縁。

11:35
映像指南役のT氏が来訪。
二見海岸の夫婦岩スポットへ向かう。
防災林として海岸沿いに松が植えられている。以前駿河湾でも同じ模様であった。
天気晴朗なれど波高し。
強風下での映像撮影、海を背景に移動しながら数カ所で動画を収録した。波音が大きい。
波打ち際の砂利を踏み締めると、ずんずんと足が沈みこみそうになった。
足掻くという言葉そのままに懸命に駆け上がった。非日常の学び。
その後近隣の赤福の茶屋でぜんざいとほうじ茶をいただく。赤福の制服のデザインが洗練されていた。

14:00
浜辺を出発。 
伊勢で過ごして学んだことは、日差しの影響が体感する気温に直結するということ。
何度も述べるが、日照も風も多く、豊かなそれにより草木も育っていくのだなと感じる。
神が住まいたいと願われるにふさわしい土地だなと思う。

14:30
アトリエ到着、セットアップ

14:45
ディスカッション開始

17:00
アンビソニックマイク(バイノーラル音声の収録に用いる機材)のテスト

17:50
オペレーションシステム ライブカメラ映像取り込みして投影のテスト

21:40 頃終了


12/2 伊勢day7

遂に1週間経つ。
10:00に集合してアトリエへ。
映像周りの機材習熟。あれやこれやと呉指南の元試す。
ケーブル周りの事について今までまるできちんとやってこなかったので勉強になる。
14:00過ぎ、ディスカッション。
話す中で、誰にこの作品を届けたいのか、という話になり、色々気づく事多々有り。
良い示唆をもらったと思う。

17:30頃まで作業。
寿司屋にて食事をして帰宅。

12/3 伊勢day8

今日よりワーケーションも後半にさしかかる。
毎朝のように納豆と温泉卵がタンパク源の朝食を摂っているが、特段体の変化を感じない。
伊勢では強い風に翼を畳み、地に降りた鳥をよく見かける。田園にはカラスが、池沼にはカモが、海の岩場ではカモメがいた。休むことも飛ぶためには必要。
宿泊しているホテルのロビーで出発前にお茶していると、フロントのバックヤードから談笑している声、とりわけ笑い声が聞こえてくる。そうした好ましい囀りと共にガラス窓を通して午前の光が差してくる。
今朝は露天風呂に入った。地上12階を吹き抜ける風に身が竦み、湯殿へ速やかに浸入していった。体が温まるに連れ、伊勢が大変クリーンでグリーンなイメージを持つことに思い至る。旺盛な陽光と吹き抜ける風により木の葉が光を照り返し、爽やかな葉ずれの音を響かせているから。そうならば、得心がいく。体を拭う間も、風は方向を千々に変えながら吹き続けていた。
出発前にホテル横の神社や河崎地区を軽く歩いて何枚か写真を撮った。柿の実が食べごろに生っていた。
12:00
ホテル出発
12:15
アトリエ到着、セットアップ

12:30
ディスカッション開始

14:40
オペレーションシステム設定の続き

17:00頃
T氏とオンラインでオペレーションシステムの映像合成についての進捗を伺う
その他オペレーションシステムのマスターから細かい調整方法を教わる。
20:30 頃終了

みたすの湯にて温泉を頂く。
絹の湯という内風呂が細い泡で白濁した湯で、湯温も高く気持ちがよかった。
昼間日差しの元で露天風呂ならいい加減だろうなという椅子風呂など、外風呂も充実していた。23時閉店。

風呂にはじまって風呂に終わった1日だった。


12/4 伊勢day9

最近この日誌の担当が直ぐに周って来る。なのでリハーサルの負担にならない様手短に。
14:00にホテル集合し、街道沿いで買物をしてからスタジオ入。
駐車場は車で溢れている。行く場所が限られるのか、中々の盛況ぶり。
そしてディスカッションをし、後にオペレーションシステムを触る。映像を重ねる方法等。
重ねる事自体は出来るが、中々キューの順番などに苦戦して思う様に走らない事で何時間も取られてしまう。此処がQlabの難しい所でもある。
延々と21:00過ぎ迄やって食事をして帰宅。
そろそろ後半戦。

写真

12/5 伊勢day10

12:00
ホテル出発
二軒茶屋餅でテイクアウト。

12:15
アトリエ到着、セットアップ

12:40
ソフト関連の連携作業
並行してオペレーションシステムの仕込み継続

明日のプロジェクション実験用にスクリーンを移動。
21:40 頃終了


12/6 伊勢day11

いよいよ終盤の空気を感じて来る。
しかしこれだけ集中的に機材の事など考えられる時間は貴重。
朝はオンラインでmtgなどを済ます。色々現実が伊勢の結界を破って侵入し始めてる。

12:00 ロビー集合。
12:20-15:45 呉はソフトのオペレーション方法を探る
       長谷川はこの合間にTextを地道に執筆。
15:45 作品のテスト。様々な問題が散見される。さて、どうしたものか。
17-20:00 様々な素材を使った映像の投影実験。

街は日曜ということもあり、店が閉まりがちで閑散としている。
伊勢市駅前の居酒屋で夕食を摂る。
フォローされたみたすの湯の代表の方からご丁寧にDMが届いていた。
私がみたすの湯にできる事は何があるか。

さあ、明日は最後の伊勢周辺への散策になるだろう。
空気感を焼き付けよう。


12/6 伊勢day12

今日も天気に恵まれとても暖かい。
雲ひとつない、という状況がたびたびある。
ソーラーパネルが設置されている光景を、車移動の車窓から頻繁にみかけていた。
S氏合流。

09:30
ホテル出発
月曜日は食堂が定休日のために朝食券が用意されない。

10:00頃
鳥羽の海沿いに到着、散策。
パールセンターや近鉄鳥羽駅近くにあるマルシェという直販所、施設前に設置された足湯に行く。

11:20頃
鳥羽南東部にある海女小屋に向けて移動

11:50頃
相差(おうさつ)海女小屋近辺に到着。
車道が切れた位置に階段が存在し、岸壁沿いを歩いて向かうことに。
googleマップでは道が存在しない。
くねった道なりにずんずんと歩くと、行けども壁が見えるばかりだったが、やがて木製の海女小屋おぜごが見えた。岸壁の小屋での飲食は予約が必要と知り引き返す。
車を止めたあたりに同経営の浜小屋かまどがあるのでそこに向かう。
サザエ、ヒオウギガイ、アサリなどの炭焼きとうにごはん等のセットを頂く。ヒオウギガイが大変な美味。一人3500円で、食事のほか現役海女との会話を楽しんだ。
蘇民信仰で海女さんの装束の頭巾には海難除けと帰還の呪いが縫い付けられている。

帰路、相差海女文化資料館に立ち寄る。
道具や写真のほか、江戸時代の書状などが展示されていた。
近隣の神明神社にお参りした。女性の願いを叶えるということで、様々な年齢の女性が訪れていた。橘や樫の木が植っていた。

13:50
アトリエへ向けて出発。

14:30頃
アトリエ到着、セットアップ

15:00
S氏向けにオペレーションシステムのレクチャー
(長谷川)別件MTG
テスト後、ソフトの修正。難航するも、試行錯誤の末成功

明日の撤収に向けて一部機材を梱包。

20:00 頃終了
その足でみたすの湯へ。
ご好意でレンタルタオルセットをご提供頂く。感謝。
施設内飲食処のひょうたんにて夕食。
温泉をいただき、呉はマッサージチェアへ。その後22:30ごろホテル着。

明日最終日。


12/8 伊勢day13

最終日。午前中にみたすの湯へ伺い、代表の脇田さんとスタッフの方と話をする。
地方都市での在り方として、様々な取組をされている脇田さんの熱意に感服。
一風呂浴びさせて頂き、その後株式会社サンシンの方より伺った伊勢外宮にある鉄板焼の店、鉄饌(てっせん)へ。ランチといえど手抜きの無い食事に舌鼓。
其処から再び東京へと車を走らせる。

今回の伊勢での滞在では、リハーサルに没頭していた為、数は少ないながらも印象的な出会いがあった。これをどう一回限りでなく今後に繋げて行けば良いのか、まだまだ課題は山積だが、私達の滞在は有意義で有った事は疑い用の無い事実だ。
とこの様に伊勢滞在記を締めたいと思う。

いずれ、また。

長谷川 寧(Hasegawa Ney) 作家/演出家/振付家/パフォーマー
呉 勇寿(Go Takehisa) 映像制作・編集・撮影/モーショングラフィックスデザイナー
黒瀧 保士(Kurotaki Yasushi) パフォーマー/プロデューサー

【滞在期間】2020年11月26日〜12月9日

※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)