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『動画2.0』レビュー

今日は、明石ガクトさんの『動画2.0』。
『メモの魔力』に続き今回も箕輪さん編集の1冊だったが、『メモの魔力』に比べると“万人ウケはしないんじゃないか?“と感じた。
書いてある内容自体は難しくないけれど、具体的な実感を持って、書かれていることの意味を理解できる人は、仕事やプライベートで動画を作ったことがある人、あるいは、youtubeやtiktokで毎日大量の動画を見て客観的な分析をしたことがある人、に限られるのではないか、と思った。

私自身は、小学校5年生くらいの時から、windowsPCで、ムービーメーカを使って日常の映像や画像を用いて簡単なムービーのようなものを作る経験をしてきた。
今や、ほとんど全ての人が毎日、スマホという、「カメラ」であり「編集ツール」であり「再生プレイヤー」であるデバイスを持ち歩いている時代。「動画」が大衆化する中で、「ホンモノの動画とは?」「ホンモノのクリエイターとは?」ということが熱く語られているのが本書だった。

1. この本を一言で

動画を作るときの心得は、「クリエイターの意思」「ビジュアルストーリーテリングの文法」「エンゲージメントを高めることを目指すこと」である。

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2. 3つのポイント

① メディアとコンテンツがSPA化する時代。クリエイターは意思を持ってコンテンツを作れ!

SPA(speciality store retailer of private label apparel)
ー アパレル業界を中心に、「小売」が「製造」まで踏み込んでオリジナル製造開発を行うこと

動画業界でも、メディアとコンテンツはSPA化している。Youtubeに動画をUPすれば即時に世界中の人に見られる時代において、「作り手」が意思を持って早いスピード感でコンテンツを作り届けることが、世界や既得権益にとって、大きなインパクトを持つことになる。

② 「動画」と「映像」は違う。「動画」は、「IPT」を高めることがポイント

IPT(Information Per Time)
ー 単位時間あたりの情報量

「映像」とは、映画やTV。一定の時間かけて見られることを前提としている。
「動画」とは、youtubeやtiktok。スキマ時間に見られることを前提にする必要がある。

セグメントされた時間=細切れの時間=スキマ時間=短い時間に見られることが前提の「動画」は、単位時間の情報量を高めないといけない。

映像が従来持っていた「時間軸」を圧縮して、新しい視聴体験を作る必要がある。
例えば、Youtubeで「間」や「不要なコメント」をカットする“ジャンプカット“や、1画面で複数の情報を同時に見せる技法など。

③ 「エンゲージメント」だけを追求しろ
動画の「再生数」をあげる事は簡単。「再生数」=最初の2秒が見られたか、であれば、その2秒だけ引きつければよいから。
しかし、その動画にコンテンツとしての価値や商業的価値はあるか?全くないはず。
その動画によって、見る人の世界観をどれだけ変えられたか、が重要。

また、1つの動画をバズらせることも意味がない。自分の作る動画には、自分なりのフォーマットを持たせ、発信するメディア自体のファンを作り、価値を高めて育てていくことが重要である。

3. 個人的に面白かったトコロ

「エジソン的回帰」
映画には2種類のスタイルがある。
1つは、いわゆる「映画」。1つのスクリーンを、複数の人が見る。これは、「シネマトグラフ」と言い、「映画館」だけでなく、家庭での「TV」もこのスタイル。

もう1つは、「キネトスコープ」。これは、「シネマトグラフ」ができる前の映画の形で、小さな木枠を覗き込んでみるもの。

時代の流れは、「キネトスコープ」→「シネマトグラフ」であるが、「スマホ」が登場したことにより、再び、映像体験が、「集団」ではなく「個」のものへと変わった。

GRP の在庫が減るテレビ業界
TVの広告価値を考えるときの尺度が「GRP」。

GRP(Gross Rating Point)
世帯視聴率の合計。この合計値を計算した値が、「どれだけの人にその広告が見られたか」という、広告のパワーを表す

かつて、TVは一家で見るものであった。しかし現状、「世帯視聴率」という尺度で視聴率を算出する方法は現実と乖離していることは想像に難くない。
これにより、TVCMの取引指標が、「世帯視聴率」から「個人視聴率」へと変わった。
これは、TV業界にとってかなりの痛手。なぜならば、GRPの在庫が減ることを意味するから。これに対して「タイムシフト」視聴率、という解決策により、視聴率の在庫を取り戻そうとする動きもあるが、これも実態とかけ離れており(CMは普通スキップするだろう)、TV業界では新たなソリューションが求められている。
一方で、最初から「個人視聴率」をKPIとしており、CMのスタイルはTVと変わらない「AbemaTV」は、現代において強いメディアとなる。

4. 最後に

「クリエイターの意思」×「IPTを高めたストーリーテリング」
⇨「エンゲージメント」を追求。メディアとしてのパワーを育てる。

という方程式は、「動画」に限らず、現代のコンテンツに広く当てはまる方程式だと思う。
Youtube,twitter,Facebook,Instagram,TikTokとメデイアが変遷する中で、「アカウント」ではなく発信する「人」自体、つまり、「自分自身」の信頼を高めていくことが資本になる時代が来たのだろう。
もしかしたら今後、メディアのFMTが変わっても、自分のコンテンツ=「画像」「動画」「テキスト」「音声」の集合体の“素“データをストック・管理するサービスが求められるかもしれない、と思った。

明日は、岡本太郎さんの『自分の中に毒を持て』です。


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