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🚀スタートアップのタスク管理にスクラムが効いた話🏈

タスク管理って何ですぐグチャグチャになるんでしょうか?
 TrelloやAsanaなどのツールを導入しても、いつのまにか更新が滞り誰も見なくなったりしますよね。

私は普段、スタートアップに対してプロダクト開発手法のコンサルティングをしているのですが、先日名古屋のとあるスタートアップでスムーズなタスク管理の導入支援をしてきたので、それについてまとめてみます。
 タスク管理に悩みをお持ちの方にとって、何らかのヒントになれば幸いです。

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1月下旬の某日、名古屋に拠点を置く新進気鋭のスタートアップ株式会社LINKさんにお邪魔し、訪問介護サービス「イチロウ」のプロダクト開発現場の業務効率化に取り組みました。
 以前から支援を続けてきた中での、さらなる成長加速をめざした3日間の集中セッションです。
 Trelloによる効率的なタスク管理とプログラムソースコードのバージョン管理ソフトウェアGitの導入をメンタリングし、経営効率・開発効率向上をサポートしてきましたので、その内容をご紹介します。

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暮らしのサポーター「イチロウ」
株式会社LINKの提供する訪問介護サービス。介護保険では対象外となる、話し相手や外出のサポート、半日以上の長時間のケアなど、離れて暮らす家族の介護に必要な、どのような要望にも対応。スマホから素早く簡単にヘルパーへ介護の依頼ができる。
シードアクセラレータープログラムのOpen Network Lab (Onlab) 16期生。
https://ichirou.co.jp/

「今、誰が何をやっているかよくわからない」という恐怖

イチロウのサービス開発現場では、主にCEOの水野さん、セールス1名、エンジニア1名の計3名体制で業務を回しています。毎日オフィスに集まり、デスクを向かい合わせて作業をしているので、いつでも必要な会話が気兼ねなくできる環境です。

これぐらいのサイズでいつでも対面で会話可能なのであれば、業務上のコミュニケーションの問題は無いのでは?と思うかもしれません。

しかし実際は「今、誰が何をやっているかよくわからない」という状況に陥っていたのです。これでは、チーム一丸で効率よく業務に取り組む、ということができておらず、スタートアップとしては非常に問題です。

とりあえずTrelloを使ってはみたものの…

イチロウではチームのタスク管理のため、Trelloを使って一人ひとりの業務を一覧にしてはいましたが、次のようなよくある落とし穴にハマっていました。

1.タスクの粒度が大きすぎて数日にわたって進捗がないように見える
2.タスクの完了の定義があいまいで人によって成果物のイメージが違う
3.タスクの責任者が明確でない
4.各々が取り組んでいるタスクの進捗状況を共有していない
 …など

たしかに、いつでも気兼ねなく会話ができる状態は良い雰囲気ではあります。しかし、だからといってメンバーの業務状況を把握できているかというと、必ずしもそうではありません。なぜなら、話題に上がった観点しか状況の把握ができないからです。

一人ひとりに逐一状況を問い合わせることで進捗を把握するのではなく、より効率良く全体の状況を把握する仕組みとして、「スクラム」のやり方を参考にすることにしました。

スクラムーー価値あるソフトウェアを効率良く開発するノウハウ

スクラムとは、ソフトウェアをアジャイルスタイルでチーム開発する時の一連のノウハウです。
 アジャイルというのは、想定外の事態が起こることを前提にしつつ、価値ある成果物をより効率良く顧客に届ける方法を常に追求し続けていくマインドセットです。
 どう捉えるかについていろいろと議論があるのは承知していますが、認定スクラムマスターの一人として現時点では上記のように解釈しています。

スクラムについてオリジナルの解説が読みたい場合はスクラムガイドを参照してください。
 ちなみに、スクラムガイドによるスクラムの定義はこちらです。

複雑で変化の激しい問題に対応するためのフレームワークであり、可能な限り価値の高いプロダクトを生産的かつ創造的に届けるためのものである。

もちろん、スクラムは基本的にはソフトウェア開発のための手段です。しかし、そのエッセンスはソフトウェア開発以外の一般のタスク管理・チームマネジメントにも応用可能な部分が多いと思っています。

今回は、スクラムのプラクティスの内、デイリースクラムとレトロスペクティブという2つのイベントをイチロウに導入しました。

3日間ベッタリ机を並べて業務効率化を指南

デイリースクラムとは、毎日15分〜30分程度の短い時間で行うスタンドアップミーティングのことです。ここでは、チームメンバー全員が順番に次の3点について報告を行います。

1.今までにやったこと
2.これからやること
3.業務を阻害しそうなリスク

このイベントを通して、チームメンバー全員がお互いに今、何をやっているかを知ることになり、さらに効率に影響しそうなリスクについても明らかにしておくことができます。
 そうすることで、全員で進捗に問題がないか確認でき、問題が起こりそうなら、それへの対応策を事前に検討しておくことが可能になります。

レトロスペクティブとは、1週間や2週間など、ある決まった長さの期間の業務内容について、その効率や働きやすさをふり返り、改善施策を検討するミーティングのことです。(決まった長さの期間のことを、スクラムではスプリントと呼びます)

よく使われるのは、KPTフレームワークと呼ばれる整理手法で、次の3点についてブレインストーミングを行います。

Keep
 このスプリントで上手くいった施策、今後も継続すべき施策は何か
Problem
 このスプリントで上手くいかなかった施策、問題があったところは何か
Try
 次のスプリントで試してみたい施策は何か

上手にレトロスペクティブが実施できるチームは、スプリント毎に業務の効率と働きやすさがどんどん改善していくことになります。

タスクをTrelloでカード化する時にも一工夫

デイリースクラムを実施することに加えて、タスクの切り出し方にも気を遣うことでチームの認識合わせがより円滑になります。

例えば、タスクの粒度が大きいと毎日同じタスクに取り組んでいるように見えて進捗が正しく伝わりません。一般に、タスクは1日で完了する程度の粒度にするのが良いと言われています。

また、成果物のイメージが曖昧だとタスクが完了した時に何度もやり直しが起きかねません。タスクカードの中に、完了しておくべき事柄をチェックリストにして齟齬が起きにくいようにしておくなどの工夫が有効です。(ちなみに、スクラム風の用語を使うと「完了の定義」「Definition of Done」「DoD」等と呼ばれます。)

他にも、責任の明確化のためタスクカードの担当者は原則1名。タスクのタイトルにはそれを実施する目的も記載。など、イチロウにはいろいろなTIPSをお伝えしてきました。

さらに、それらのTIPSを惰性で実施し続けるのではなく、レトロスペクティブの中で継続的に見直し、改善し、イチロウに一番合った形にカスタマイズしていくように促してあります。

ところで、Trelloには便利な拡張機能が豊富に用意されていますので、それらを活用するのも良いでしょう。
 イチロウには無料で利用できる下記の2つを紹介しておきました。

1.Pro for Trello
 タスクへの優先度の設定、タグ機能の追加、カード番号の表示、カスタムCSSの設定など、これ一つでいろいろ便利にできる
2.Elegantt
 ガントチャートを表示できるようにする。スケジュールの把握に便利

スクラム導入と改善されたTrelloボードでより働きやすい職場へ

タスクのカード化がうまくできるようになったら、次はタスクの進捗をどのように可視化するかを考えます。

一番スタンダードな方法は「Open」「In Progress」「Completed」と分けることで、「これから着手するタスク」「実施中のタスク」「完了したタスク」を見える化する方法です。

イチロウでは少しアレンジを加え、「レビュー待ちの状態」と「レビュー後修正待ちの状態」も用意してみました。エンジニアがソースコードをアップデートした後、ビジネスサイドのメンバーがテスト環境で見え方をチェックする、というイチロウの既存の業務フローに合わせた形です。

これにより、レビューを依頼する・レビューの結果を通知する、というコミュニケーションがTrello上で円滑に進むようになりました。また、レビュー待ちのタスクが滞るケースも大きく改善できました。

もちろん、このプロセスについてもレトロスペクティブで頻繁にアップデートを繰り返し、非効率であったり、やりにくかったりする部分の改善を続けています。

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「終わったタスクをアーカイブしない」を試して横長になったボード

エンジニアの開発プロセスもモダンなスタイルに一新

実は、これまで説明した改善活動と平行して、エンジニアの開発プロセスにもメスを入れていました。

既存のプロセスでは、イチロウのWebアプリをアップデートする際、FTPソフトを使って更新するファイルを手作業でアップデートしていました。また、ソースコードのバージョン管理も無いに等しい状態でした。

エンジニアは、プロダクトの価値向上に直結するコーディングに時間を割くべきですが、この状況では、ソースコードの更新や管理にまつわる様々なオーバーヘッドに手間をとられてしまいます。

そこで、Gitによるバージョン管理、GitHubでのリポジトリ管理、そしてサーバーへの自動デプロイなどの施策を導入し、開発プロセスを円滑化しました。

まとめ:改善を続けられる仕組みの定着がキモ

メンタリングから1ヶ月が過ぎた頃、CEOの水野さんからコメントを頂きました。

1日も欠かさず行えていて、かなり順調に運用できていると思います!
デイリーやレトロスペクティブとかがなかった時が怖いなと話しているほどです!

「怖い」という言葉が興味深かったので具体的に聞いてみました。

・お互いが作業が共有できないこと
・プロセスを改善する機会を作らずダラダラやっていたらスピードが上がらないということ

イチロウは、チーム一丸で絶えず効率の改善を続けていくアジャイル、スクラムのマインドセットを着実に身に着けつつあるようです。

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デイリースクラムのメンタリングを真剣に聞くみなさん

もし、創業期のスタートアップで業務効率やメンバー同士のコミュニケーションに関する悩み事、もしくは、Gitの導入や運用についての悩み事があればいつでもご相談を受け付けております!

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私がメンターとして所属するOpen Network Labでは創業期の起業家をご支援しています。
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Open Network Labは「世界に通用するスタートアップの育成」を目的に、Seed Accelerator Programを2010年4月にスタートしました。
活動資金やオフィススペースなどの設備を提供すると共に、事業のブラッシュアップを目的としたコンテンツやスペシャリストによるメンタリングを通じて、これまで100社以上のスタートアップを支援・育成しています。
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フロントエンドエンジニア、スクラムマスターを経て、今はスタートアップに対してスクラム導入などを支援するメンター。デジタルガレージ Open Network Lab所属。趣味でWebアプリやディープラーニングアプリの開発など。フレームワークの中では特にReact/Reduxが好み。