In Walked Bud ジャズスタンダード深堀り : リズムラボ

 ジャズスタンダード曲として親しまれていて、とても美しく抒情的なメロディをもつ"In Walked Bud "は、アメリカ合衆国・ノースカロライナ州出身の作曲者でピアニストの Thelonious Monk(セロニアス・モンク)が1947年に作曲したジャズ曲です。


 この曲はモンクの友人合衆国のジャズピアニスト、 Bud Powell(バド・パウエル)に敬意を表して作曲したもので、合衆国で活動した現ベラルーシ・当時ロシアのトロチン出身の作曲家 Irving Berlin(アーヴィング・バーリン)の1926年に制作されたポピュラー曲 Blue Skies の影響を受けたと言われています。
 Blue Skies は Betsy というミュージカルの曲として書かれた曲で、元をたどると、ミュージカル曲から派生した西ロシア・東ヨーロッパ文化の影響を受けたジャズ曲と言えますね。
 聞き比べると和音の進行やメロディから共通点を見出す事ができます。


この楽曲の制作話には多くの著名ジャズ音楽家たちがそれぞれのストーリーを語っています。
 パウエルの伝記の中には、1945年にニューヨークのマンハッタン・ハーレムにあった演奏スポットの一つ、サボイ・ボールルーム に警察が踏み込んだ際に、パウエルが自分を弁護してくれたことに対するモンクの感謝の気持ちとして In Walked Bud を作曲したと挙げている。
 モンクの伝記作家であるトーマス・フィッターリングによると、警察が会場に踏み込んだ際、モンクは身分証明書の提示を拒否した為力ずくで逮捕された。
 モンクのファンでその場に居合わせたパウエルは、警察をドアの前で阻止しようとし、「やめろ、何をしているかわかっていない。あなたは世界で最も偉大なピアニストを虐待しているんだぞ。」と叫んだ。パウエルは警察官に警棒で頭を殴られて負傷したという。
 この負傷事件について、マイルス・デイビスはパウエルがお金を持たずにクラブに入った後、サヴォイ・ボールルームの用心棒に殴られたと語っています。

ドラマーで見る "In walked bud"

  アートブレイキー・ジャズメッセンジャーズの録音がありました。
 アートらしいシンバル・レガートにフィル。彼のリズムで彩られたメロディが響き渡る録音です。


おわりに

 ジャズのスタンダード曲として親しまれている In Walked Bud。
 その背景を紐解いてみると、東ヨーロッパ・西ロシア文化と合衆国のミュージカル文化と、当時のハーレムのジャズ文化が重なり合って、第二次世界大戦戦勝の二年後、まだまだ戦勝ムードも冷めやらぬ年でトールマン大統領政権の中で生まれました。
 様々な文化要素が絡み合った楽曲のIn Walked Bud。面白いですね。

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