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ゴールド 金と人間の文明史-43 -ここにきたのは金を奪うためだ- フランシスコ・ピサロ

たいていのスペイン人はインディオを虐待しながら、それは彼らの運命を変えてキリスト教の祝福をもたらすためだと、もっともらしい理由をつけたがった。

しかし、フランシスコ・ピサロは真の目的を隠そうとしなかった。

-ここにきたのは金を奪うためだ-


1532年、ピサロ率いる200人からなるスペインの遠征隊はインカの3万人の軍勢の抵抗を制圧した。

そして、少なくとも350万人の人口を持つ大帝国 -現在のエクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチンが含まれているインカ帝国- を征服した。


ピサロは一部の財宝 -カールⅤ世に献上するための品物- を除いて、インカ帝国から集められた財宝を金の延べ棒に変えたが、この作業 -インディオの金細工師に命じた- にはまる1ヶ月かかるほどだった。


インカ帝国の物語は無残な終焉を迎える。

捕えられていたインカ皇帝アタワルパは裁判 -スペイン軍によるかたちばかりの裁判- にかけられ、皇位の簒奪、公金の浪費、姦淫、偶像崇拝、スペイン人に対する反乱の扇動などの罪状で有罪とされた。

刑が言い渡されたあと、アタワルパは目に涙を浮かべてピサロに、こうたずねた。

-私や私の人民が何をしたというのか。何ゆえにこんな運命にあわねばならぬのか。しかも、私の人民が友好的にかつ親切に迎え、われらの富を分け与えてやり、私の手から利益以外の何も受取らなかったお前の手で-

ピサロは何も言わずに顔をそむけた。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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