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国際的金本位制の成功は原因というよりも現象だった ゴールド95

金本位制が成功した理由は、信頼性への、またその信頼性によって保障される協力を無条件に受け入れることにあった。

そして、金本位制は神秘的な力を獲得していった。

信頼性

金本位制の歴史と機能の研究の第一人者であるバリー・アイケングリーンは、金本位制が成功した理由を「信頼性への、またその信頼性によって保障される協力を無条件に受け入れることにあった」と表現した。

ここで信頼性とは、国家が金の使用を永久に中止すること、あるいは金平価を変更することは絶対にないという意味である。


政治的・経済的な同質性

金融情勢の周期的な混乱が生じはしたが、南北戦争が終わってから第一次世界大戦ば勃発するまでの間、アメリカでもヨーロッパでも目覚ましい経済成長と工業化が達成された。

そして、この期間は大きな戦争もほとんど起こらなかった。

つまり、金本位制は同質の政治的・経済的な状況の下で機能することができていた。


国内経済の安定と高い雇用率の達成よりも優先される

さらに、金本位制が成功した理由としてきわめて大きな要因があった。

金本位制においては、国内経済の安定と高い雇用率を達成することよりも金準備を守るという目標が優先されたのだ。

自国の通貨と他国の通貨の交換比率が固定されている経済では、国内経済は金本位制の要求に支配される。

金本位制の要求とは、金準備が国外に流失していれば、外国の資金を引き寄せるために金利を上げなければならないし、輸入を減らすためには国内経済を縮小しなければならないということだ。

そして、国内経済にどんなに激しい痛みが伴おうと、政府は介入しようとは思ってはならなかった。

なお、当時、今日の私たちが考えるような政府への抗議はほとんど存在できなかったため、国内経済は優先されることがなかった。


商業的繁栄の結果が金本位制

つまり、国際的金本位制の成功は原因というよりも現象だったのだ。

1895年、ベンジャミン・ディズレーリは次のように語った。

「イギリスが商業的に優勢で繁栄している原因を金本位制に求めるとしたら、それは途方もない勘違いです。わが国の金本位制は商業的繁栄の原因ではなく、その結果なのです」


金本位制は神秘的な力を獲得

しかし、このディズレーリの真理は一般に理解されることはなかった。

19世紀を通じて、金本位制は神秘的な力を獲得していったのだ。

そして、当時の良好な経済状況は金本位制のおかげで実現したという確信は、拭い難いものとなってしまった。

この確信が、1921年から1971年に最終的に金本位制が崩壊するまで、ヨーロッパ人があらゆる苦難と試練を乗り越えてでも金本位制を回復させようとした理由となった。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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