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金本位制のおかげだったと信じるしかなかった ゴールド102

1914年から1918年にかけての第一次世界大戦は、世界の大半を見る影もなく変えてしまった。

しかし、第一次世界大戦が終わると、戦前を形作った一つの要素が勝ち誇るように再び立ち上がった。

金である。

なぜ、金が第一次世界大戦後の国内外の政治的な争い、経済政策を支配することになったのだろう?

金本位制への回帰

第一次世界大戦は、戦域、死傷者数、費用、苦しみなどの点から考えて、それ以前には一度も起こることがなかったものだ。

すなわち、第一次世界大戦終結後の1920年代の政治家や経済学者は未知の領域にいた。

彼らは第一次世界大戦前、平和が長く続き、生活水準が向上した時代に、世界がまとまっていられたのは金本位制のおかげだったと信じるしかなかった。

そんな彼らが金本位制へ回帰しようとしたのは当然だった。


過去の経験から分かっていたこと

政治家や経済学者は、貨幣価値が不信となると社会構造、財産所有権の確立された秩序、経済発展などが破壊的な影響をこうむることがあると分かっていた。

戦後世界の不安定な状況下で、過去 -金本位制- に頼らず、新しい実験をすることは全く魅力がなかった。

戦後復興への道は、金本位制に頼るしか方法はなかった。


カンリフ委員会

イギリスでは1918年に「戦後、効率的な金本位制の整備に必要な条件が一刻も早く回復されることが必要不可欠である」とカンリフ委員会 -イングランド銀行総裁カンリフ卿が委員長を務めた特別委員会- の報告書で述べられた。

しかし、カンリフ委員会は金本位制への回帰という目的地は述べたものの、その道筋については触れていなかった。


第一次世界大戦の大惨事によって、金本位制の発展を促した基本的かつ本質的な条件のほとんどはボロボロになっていた。

しかし、完全な復興を成し遂げるには金本位制が本来の姿に戻ることが必要不可欠であると想定された。

このとき、立ち止まって、ディズレーリのあの言葉を思いだそうとするものはいなかった。

「19世紀の金本位制は繁栄の結果であり、原因ではない」


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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