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ゴールド 68 平価切下げの提案

イングランドは貨幣改鋳を先送りすることができない状況になった。

古い銀貨が流通しなくなり、造幣局にも全く持ち込まれなくなっていた。

※古い銀貨は削り取りにより小さくなり重量も減っていたため、取引や借金返済のときに受取られなくなり、銀貨が貨幣として流通しなくなった。一方、その小さくなった銀貨を造幣局に持っていき新しい銀貨に交換してもらうと、受け取り分が古い銀貨の額面金額を大きく下回ってしまい、交換する意味がなくなっていた。


こうしたなか、1695年にウイリアム・ラウンズが「銀貨改正に関する小論文」を発表した。この小論文を根拠としてラウンズは平価切下げを提案した。平価切下げをすると、一定量の銀を造幣局に持ち込んで新しいシリング銀貨に交換してもらったとき、以前よりもシリング銀貨を多く受け取ることとなる。

※回収した銀貨は削り取られているため、削り取られた分だけ銀の価値が減っている。そこで、新しく交換する銀貨は銀の含有量を(削り取られる前の)古い銀貨の80%ほどにする。つまり、銀貨の価値を(80%に)下げることが平価切下げ。逆から見ると、平価切下げは銀の価格を引き上げることと同じである。


ラウンズはこの改革を強く主張した。ここで改革をしなければ、銀はもう造幣局に持ち込まれず、貨幣は生まれなくなってしまう。商品の支払いや借金の返済に使う貨幣が不足すれば市場は不景気に見舞われ生産は縮小していく。つまり、デフレーションに陥ってしまうと。


しかし、この提案は大蔵大臣チャールズ・モンテギューの反対にあった。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン


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