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ゴールド 61 錬金術を修得したフビライ・ハーン

マルコ・ポーロは中国の紙幣に非常に感銘を受け、それは一種の魔法だとさえ考えた。

彼はマルコ・ポーロ旅行記で「フビライ・ハーンはまさに錬金術をすっかり修得したと言っても差し支えないくらいだ」とその特徴を述べている。


紙幣は硬貨に比べ羽根のように軽かった。桑の樹脂から作られたその羽根にしかるべき役人が署名し、フビライの紋章を捺印する。

これで、その羽根は紙幣として純金や純銀の貨幣と同等の格式と権威を付与された。そして、紙幣は法的に認証されたものとなる。


マルコ・ポーロによれば、フビライが帝国内で発生するどんな支払いも紙幣で行うように命令したが、それが実行されたのは武力による強制では全くなかった。

どこでも同じ紙幣が通用するために、誰もが喜んで紙幣での支払いを受け入れたのである。


もちろん、紙幣制度が成功したのはフビライの圧倒的な権力が必要だったのは確かだとしても、それ以外の理由もありそうだ。

それは、中国では紙幣が外国でも受け入れられるかどうかをあまり心配しなくても済んだ -ヨーロッパと異なり、広大な中国は自給自足の経済を確立できていた- ということである。


中国の人々がフビライの支配地域の外では資産として認められない紙幣を保有する一方で、フビライ自身は世界のどこでも資産と認められる財産を蓄積した。

商人が真珠、宝石、金、銀などの貴重な品を携えてフビライの領土に到着するか、あるいはどこかの町が宝石や貴金属を獲得すると、彼らはかならず全ての財宝を紙幣と引き換えにフビライに渡さなければならなかった。

そして、彼らは喜んで紙幣を受取った。


まさに、フビライは錬金術を修得していたのである。

少なくとも彼の宮廷の中では。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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