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ゴールド 金と人間の文明史-49 ルネサンスとマルティン・ルター

1500年代、ヨーロッパ全土では戦争による荒廃と宗教的な対立に揺さぶられながらも、盛期ルネサンスの時代が進行し芸術と科学の進歩がかつてないレベルに達していた。

内部を黄金で飾り立てたサンピエトロ大聖堂が建立され、ガリレオガリレイは太陽系の解明に努め、商人たちは複式簿記という画期的な会計技術を初めて採用した。


そして、この世紀の最も重要な出来事は1517年に起こったマルティン・ルターによる宗教革命である。

ルターは「95か条の提題」をヴィッテンベルクの教会の扉に打ち付け、信仰の在り方を一変させ、芸術様式に革命を起こしたばかりか、王朝間の政治上の関係をずたずたに引き裂いた。宗教革命が引き金となって起こった戦争もいくつかある。


この時期、イングランドも足かけ14年にわたって戦争をしていた。ヘンリーⅧ世の出費はかさむ一方で、高金利で借金をし、修道院や教会から没収していた貴重な財産を売り飛ばすなどしたが、最後の手段として貨幣の改鋳にも踏み切った。

ただし、戦争でどれほど多大な被害と出費を強いられたとはいえ、イングランドが戦争に費やした時間はスペインとフランス -スペインはフランスと30年近く交戦していたし、イングランドに無敵艦隊を送り込み敗北、ネーデルランドを服従させようとしつこく軍隊を送り込んでいた- に比べればはるかに少なかった。

この差はおそらく、チューダー朝のイングランドで経済が比較的急速に発達したためであろう。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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