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金本位制の廃止~ドルは金の足枷から自由となった~ ゴールド123

合衆国新大統領リチャード・ニクソンはジョン・コナリーを財務長官に任命し、「金本位制の廃止」と「物価及び賃金の統制的管理」という二つの手を打った。

1971年8月15日、いわゆるニクソンショックである。

金本位制の廃止

合衆国は外国政府や中央銀行に金を1オンス35ドルで売るのを拒否した。

この措置によって、ドルが金と交換できる制度は終わりをむかえた。ドルは、世界中の他の通貨と同じように金の足枷から自由となり、外国為替市場で浮動することとなった。


金本位制廃止の意味

金本位制が廃止されたことで、あらゆる外国為替レートは市場で定められることとなる。つまり、需要と供給でのみ通貨の価格が決定される。

たとえば、フランス銀行が必要以上のドルを持っているとする。フランス銀行が市場にそのドルを供給すると、ドルの価格はフランに比べて下落することとなる。ここで、ドルが固定価格で金と交換できる -金本位制では1オンス35ドル- とどうなるだろうか?

フランス銀行は、下落したドルを新たに購入するかもしれない。なぜなら、フランス銀行は1オンス35ドルで、合衆国財務省でドルを金に交換することができるからだ。つまり、ドルは金と同じなのだ。ドルが金と同じならば、ドルの供給量が増えても、ドルの価格は下落しない。

しかし、ドルが金と交換できない -ドルと金が同じでなくなる- なら、ドルの価格が下落するか上昇するかについての自動的な制限はなくなる。すなわち、通貨が浮動することとなる。こうした場合、ドルの下落を防ぐためにはどうすればいいのか?

その唯一の方法は、フランス銀行がドルを買って保有する -あるいは、合衆国財務省が保有しているフランを売る- ことである。この方法を取らない限りはドルは値下がりし、フランは値上がりすることとなる。

つまり、ニクソンとコナリーは金本位制を廃止することで、外国の中央銀行に意地の悪い選択肢を差し出したのだ。外国の中央銀行がドルを買わなければドルは値下がりし、ドルを保有していた外国の市民は大きな損失をこうむることとなるのだ。

これこそ、ニクソンとコナリーが目指した成果 -アメリカの企業と仕事にプラスとなる- だった。ドルが値下がりするとアメリカからの輸出が増大し、外国からのアメリカへの輸入の魅力が減少する。それにより、自動的にドルの下落が修正される -アメリカの外国通貨への需要が減少し、外国のドルへの需要が増加する- かもしれないということだ。


物価及び賃金の統制的管理

金本位制を廃止するために、パッケージとして行うべきことがあった。

金本位制を廃止するとドルが下落し、アメリカでインフレが生じることなる。このインフレを防ぐ必要があった。

このインフレを防ぐために、物価と金の結びつきを断ち切ること及び賃金統制を行うことが、金本位制廃止とパッケージとして行うべきであるとニクソンとコナリーは分かっていた。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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