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#68 人生最大のラッキーを、また手繰り寄せられる私になりたい【伊佐知美の頭の中】

灰色で、変わり映えしない毎日。本当の私はきっとこんなんじゃないのに。「まだ私は本気出してないだけ」なんて心底ダサい。でもそういう風に考えたくなってしまうくらいに、またいつもと同じ明日が来る。

そんな、不幸ではないけれど平坦な日々を、変えてくれる人と出会ったことがある。
その人に見つけてもらえたことが、私の人生最大のラッキーのひとつだ、と思えるくらいの人。

その人は少し年下で、出会った時の私たちはまだどちらも20代半ばだった。

当時の私は、金融業界から転職して、夢の出版社に入って、毎日会社全体に広がる紙の香りを胸いっぱいに吸い込んで、雑誌や漫画、小説や幼児誌など世に在るありとあらゆる「本」の最先端の尻尾に触れながらアシスタントの仕事をしてた。

内定の電話が来た時は、飛び跳ねて喜んで、電話を切って涙をポロリ。その後、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月……末長く楽しく幸せに暮らしましたとさ、とは、でもいかなかったのだ。

出版社に転職した理由は、「書き物で身を立てたい」のはじまりに立ちたかったから。まだあの頃はフリーランスになる、なんて直接的な方法は怖くて取れなかった。

だからまず業界に身を置いて、そこから編集部なりなんなりに転籍できたら、と考えていたけれど、日本で100年間第一位の座に輝いていた出版社は伊達ではなく、未経験者がふらりと転籍できるような場じゃないことに中に入った私は気づく。

だから、26歳になったばかりの私は決めたのだ。「会社の外で、まずはライターの仕事をしよう」と。

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