『説教』

『結局のところポイントは、いつ君のプライドが砕かれるか、というところだね。

君みたいに、顔立ちが整っていて、ある程度知性があり、学生時代からチヤホヤされてきたやつは、プライドが高い。
まったくこれが、拗らせるんだよなあ。

会社っつーのはだね、機能を持った「演劇」なんだよ。ピラミッドの中で各人に与えられた位置があり、君らはその位置で然るべき「役」を全うする。無数の劇の集積としての舞台、会社は、機能として、有機的に成長していく。

おれの力はこんなもんじゃあない。?

困るんだよねえ、勘違いされると。お前らは、歩くこともできない、赤子なんだよ。動物社会だったら喰われて死んでんの!

それが優しいことに、喰われない安全で、しかし無能でも全うできる役を与えてやってんじゃない、こっちは。君も入りたくてここに入ったんでしょ?

出過ぎた真似はせずに、死ぬまで、王の為に墓を作り続けてくれたらいいよ。』


忘年会の帰り道だった。僕らの目の前で、部長がトラックに轢かれた。粘土細工のような身体はグチャりと壊れた。

頭が千切れ、僕らの前に転がった。僕はその赤い球体と目が合った。口が動き出す、それは僕に、説教を垂れ始めたのだ。

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