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食べたコラーゲンがお肌のコラーゲンになるわけないやん

教科書にのっているような情報も、年を経ると色あせてしまうらしい。

僕が子どもの頃は、恐竜はトカゲっぽかったが、最近では「鳥っぽい」に変わってしまったし(恒温で羽がある)。コレステロールが高いと卵を食べちゃいけないという医学常識も、なくなってしまった(コレステロールは肝臓でつくられるので、食べなくても増える)。

ノーベル賞の本庶先生も、「教科書に書いてあることを信じない。常に疑いを持って本当はどうなんだろうという心を大切にする」と言っている。

今回は、自分が経験した「教科書情報」に裏切られた話。

コラーゲンをとって、お肌のコラーゲンになるわけない。

ブタのコラーゲン鍋を食べて、翌日、お肌がプルプルになり、「え~、昨日のコラーゲンがもう、お肌に届いたみたい」と喜ぶ女性に言いたい。

コラーゲン入り化粧品をぬりたぐって、「え~、コラーゲン浸透して、コラーゲンになっちゃった」と喜ぶ女性に言いたい。

「君のお肌はブタになったのか?」

「君はブタコラーゲンを移植したのか?」

コラーゲンを食べる。コラーゲンは大きな分子なので、そのまま吸収はできない。そこで、消化し、小さく刻まれる。アミノ酸が連なったペプチドという状態になる。

消化はつつがなく進み、もっと小さくなる。アミノ酸までなるとスーっと腸から吸収され血液中に入っていく。そのアミノ酸を材料に、自分のコラーゲンをつくっていく。

こう考えると、コラーゲンをとろうが、お肉を食べようが、変わりがない。いや、コラーゲンの栄養素は偏っており(グリシン、プロリンという種類のアミノ酸が大半で「アミノ酸スコア」というものが少ない)、お肉を食べた方がよほど良い。

だから、「コラーゲンを食べても無駄」だと考えていたし、実際、そのように多くの本に書かれていた。偽科学を検証する本には、頻繁にやり玉としてあがってくるネタでもあった。

そこが教科書的な話。そして、ある方の教えで、コラーゲンの機能性を知ることになる。

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「コラーゲンを食べることで、お肌の再生につながる」

という情報を教えてくれたのは、とある女性研究員だった。
彼女はコラーゲンシートに抗体を敷き、ある種のウイルスの検出試薬をつくっていた。研究としては正統で、あやしげな研究をしているわけではない。

「コラーゲン食べて、コラーゲンになるわけないですよね」と、話しかけたことがある。「これを知りたい」とかではなく、話題をつくるための、アイスブレイク的な質問だった。。。「阪神勝ちましたね」的な。

コラーゲン研究は彼女のホームグラウンドだったので、予想以上に分厚い回答が返ってくる。。。「今年も救援はいいんだけど。若手の先発が欲しいところね」的な。

彼女曰く。
「コラーゲンを栄養素としてとらえるのではなく、機能性食品としてとらえるのなら答えはイエス。ある種のコラーゲンペプチドは、線維芽細胞を刺激する」

「すべてのコラーゲンが効果的ではない。コラーゲンをある酵素で切った、特別な形をしたペプチドでなければならない」

なかでも、彼女の言葉で納得させられたのは、それが「傷を治す機序と同じ」だったところだ。

昔、私たちは「怪我をする」がデフォルト設定だった


狩猟民族であった、わたしたち人類は、それはそれは怪我を重ねていたらしい。怪我をしたら、体に「あなた膝小僧、むけてるやないですか。はよ、なおさんと、いかんよ」と信号がでてくる。その信号に反応し、肌の再生がはじまる。

「その信号が肌(タンパク質)のこわれたもの、つまり、コラーゲンペプチドなのです」と彼女はおしえてくれた。

私たちの皮膚はタンパク質でできていて、それが怪我によってバラバラになる。ぐちゅぐちゅした傷には、コラーゲンペプチドが多く含まれる。これが引き金となり、体は再生モードに突入する。

コラーゲンペプチドを飲むことは、体をちょっと騙すことだ。怪我をしていないのに、「皮膚をつくりかえて」と、体に訴えかける。体は正直に、「はい、ではつくりましょう」と反応してくれる。「狼が来たぞ」という男の子に反応する村人のように。

オオカミ少年とちがうのは、村人は疑うことを知らず、ずっとプログラムされた反応を続けることだ。

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「百聞は一見にしかず」

理論よりも、実際、どうなるかをみてみよう!と臨床試験をやってみることにした。

コラーゲンだけだと心もとないので、植物の力にも頼ることにする。ノニ(こちらも創傷治癒の効果があるという研究がある)とアーチチョーク(毛穴に良いと評判だったので)を加える。亜鉛不足は肌再生を阻害するので(にもかかわらず女性は亜鉛摂取は低い)、ミネラルも加える。

コラーゲン飲料を飲むビフォーとアフターで、肌の弾力性を測る。測定はドイツ製の「キュートメーター 」を使う。キュートメーターは名前こそ、「キュートさ」を測る、オタク系に聞こえるが、実際は皮膚研究に使用される実験機器で、再現性も高い(価格も高い、200万円ほどした)。ちなみに、機器名の「キュート」はかわいいの「Cute」ではなく、ラテン語の「cuti-(皮膚)」からきている。

「あら、本当だ。皮膚がふっくらした」

結果は、あの女性研究員の言うとおり、飲むことにより、ちゃんと皮膚に良い影響が観察できた。

飲んだ人の感想とか、まわりの感想とかではなく、数値として、統計的に「よくなった」が証明されていた。

結果に感心すると同時に、「常識にとらわれなかったので、分かった」と「教科書的な知識」を考え直すきっかけとなった(ちなみに、この結果は学会誌に発表しました)。

中国でも臨床試験を行ってもらい、結果は概ね同じで、コラーゲン+植物栄養素+亜鉛飲料は、美容に良いと再確認できた(こちらも論文発表しました)。

教科書は信じてもいいけれど。。

「コラーゲン食べてもお肌がよくなるわけない」とは、教科書の知識から来たもの。

「コラーゲンドリンク飲んだら、お肌の調子がいい感じ」は、実感からきたもの。

学問は知識に頼るのではく、生活から来る直観や実感を含む「情感」を重視するべきかもしれない。そうしないと、教科書を刷新することができなくなってしまう。

学問の世界では、客観的なデータがものをいうが、情感なくして、学問をすすめることができない。

「あれ、コラーゲンのむと、お肌いいじゃん。だったら、これ調べないと」という姿勢の人と、「これはあの本にこう書いてあるから、こうなんだ」という姿勢の人がいる。

後者のコンサバな人がいることも大切だが、前者のイノベーティブな人なくして、科学を前に進めることができない。小さなコラーゲンの話だけど、今回は、それをよーく感じました。

こちらは、コラーゲンの効果を論文。興味がある方は参考にどうぞ。
*Akemi Uwaya, Fumiyuki Isami, Claude Jarakae Jensen, Summer Brockman, Brett Justin West. International Journal of Clinical Dermatology 2018; 1(1): 22-27. Noni Juice and Hydrolyzed Fish Collagen Supplement Improves Skin Elasticity
*N. Tomida, A. Uwaya, F, Isami. Medical Science Digest Vol45(13), 2019. Improvement of hair condition by ingesting of beverage containing Noni fruit juice and fish collagen peptide (ノニ果汁・魚由来コラーゲンペプチド含有ドリンク摂取による毛髪の状態改善)
** LIN Ping, WANG Min, LIN Yung-Hao, LIN Yung-Hsiang, KUAN Chen-Meng. 实验与检验检测2020 年第6 期/ 39 卷/ 总第456 期. Evaluation of Noni Collagen Drink for the Anti-aging effect on Human Skin




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