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目撃!フクジュソウの実がなくなるとき

わたしが暮らしている北海道十勝地方では、毎年3月20日ごろにフクジュソウという黄色い花が咲きます。他の花たちに先駆けて咲くため、春の訪れを知らせてくれる花として親しまれているフクジュソウ。花こそよく知られていますが、その実をご覧になったことはあるでしょうか?

これがフクジュソウの実

フクジュソウの実は直径1.5cmほどの、緑色のラズベリーのような形をしています。花が終わると結実するのですが、一ヶ月ほど経ったころ、ある日突然パッと無くなります。急に姿を消す実。わたしはその無くなり方が気になっていました。

突然パッと消える不思議

植物の中には実を弾けさせることで種子を飛ばすものがいたり、鳥や哺乳類に食べてもらうことで子孫を遠くへ移動させるものがいます。フクジュソウの実はまるでプチッとちぎり取ったように突然無くなるので、わたしはきっと動物が食べることで実が無くなるのだろうと予想しました。

そんな中、今朝ついにフクジュソウの実がなくなる瞬間を目撃することができました。ところが、その無くなり方は意外な形でした。

ついに目撃!実が無くなる瞬間

早朝から庭の草むしりをしていた時、視界の端に庭先に生えているフクジュソウが映りました。「そういえば実はまだあるのかな?」と覗き込むと、すでに実が無くなったフクジュソウの株を見つかりました。ありゃ、今年もまた実が無くなる瞬間が分からなかったな…と思ったその時、となりの株に残っている実と、その実の上に小さなアリが居ることに気がつきました。

アリはなにやら、触覚を忙しく動かしながら実を調べていました。まるでヒミツのスイッチを手探りしているような、一生懸命な様子。その姿を見てふと思い出しました。植物の中には、鳥でもなく哺乳類でもなく、アリに実を運んでもらう植物がたくさんいるのです。

たとえばスミレは、実の一部に「エライオソーム」と呼ばれる部品をつくります。これは脂質などを豊富に含んだもので、いわば「アリのお弁当」。アリはこのお弁当目当てに実を株から取り出し、自分の巣の中へと運んでいきます。その後アリはお弁当の部分だけを切り出すと、種子の部分を巣の外へと捨てます。こうしてスミレの種子がアリの力で遠くへ運ばれるのです。

わたしは、フクジュソウの実は本当にパッと無くなるので、少しずつ行われるアリ散布で無くなるとは予想していませんでした。ところが、目の前にいるアリは、明らかに、実に齧り付き、後ろ脚を振り回して、株から実を引き抜くために踏ん張るための足場を探しています(上の写真を見て!)。この必死さ…やはりアリ散布なのか…!

しばらく観ているとアリは器用に実の一部を取り出しました!

すぽっ!実が取れた!

アリが地面へ降り、実を運びはじめると、仲間も寄って手伝いはじめました。フクジュソウの種への関心の高さが伺えます。

これで、フクジュソウの実が無くなる流れが分かりました。ただ、それではなぜ、パッと無くなるように感じるのだろう?と疑問が残りました。

その時、不意に実の部分に指先が触れ、バラバラっと実が落ちて、地面に小さく広がりました。

アリは一生懸命踏ん張ろうとしていましたが、実は人間の力だと簡単にボロボロと落ちるつくりになっていたのです。なるほど、これでパッと実が無くなることに察しがつきました。強風が吹いたり、実と葉が触れるときに実かボロボロと地面に落ち、アリはその落ちた実を運び去る…という流れが起きていたのかもしれません。

春の早朝に、自然の仕組みが少しだけ分かった嬉しさを味わうことができました。

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