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イギリスの教育制度#2

前回の続きとして、本日はイギリスのAdvanced-levelsとはどういうものなのかをお届けします。

前回の投稿では、イギリスの義務教育期間についてお話ししました。

さて16歳でGCSEを取得した後、大学進学したいと考えている生徒は12年生と13年生の間にGeneral Certificate of Education Advanced level(Aレベル)というものを取得します。扱いとしては”資格”になります。2016年にこのAレベルが大学入学の資格に値すると日本の学校教育法の一部に改正がありました。なのでAレベルを取得していれば、日本の大学を受験するのも可能となります。

https://www.britishcouncil.jp/exam/other/gce-a-level

ただ私が大学に入学したのは20年以上前です。中学を卒業後に単身渡英したのですが、私立中高一貫校に通っていた私は先生たちに高校に籍を残しておくよう強く勧められました。学校に行かないのに学費を払い続ける必要性を全く理解できずに籍は残さなかったのですが、今になり先生の言っていることが理解できるようになりました。その時点で私の留学は「とりあえず高校はイギリスへ」というフワフワしたものだったので、たとえAレベルを取得したとしても日本の大学を受験する資格はなく(高校卒業とみなされない)、単身留学だったので帰国子女でもなく、路頭に迷う可能性を心配してくださっていたのですね。

さて、本題です。Aレベルですが、通常英国の大学に進学する者が取得する資格です。大抵の大学で入学基準として3教科は求められるようになります。PassとFailだけではなく、AからEまでグレードがつけられます。志望大学や学部によって、求められる教科やグレードが変わりますが、試験の内容は同じです。教科は50程度あります。メジャーなものとしてはEnglish, Mathematics, Biology, Chemistry, Physics, History, Geography, Economics, French, Spanish, Art, Musicなどでしょうか。試験は誰でもチャレンジできるのですが、実際自分の通っている学校に担当の先生がいない状態で独学で勉強し試験にチャレンジするのはなかなか難しいのかもしれません。

このAレベルですが、私がイギリスに留学する前に「日本の大学の教養課程ぐらいのレベルを求められるものだよ」と、言われました。幅広く色々勉強するという日本の高校生とは違う、「自分の興味があることを専門的に学ぶ」ということに魅力を感じてアメリカではなくイギリス留学に決めたという側面もありました。実際にこのAレベルは学ぶのが好きな人にとってはとても良い制度だと個人的には感じています。

日本の大学受験は、自分で経験していないので直接比較するのは難しいのですが、友人や妹の話を聞くと「過酷で大変でストレスフル」というイメージを持ってしまいます。私のAレベルの2年間は、「ストレスなくただいろんなことを学んだ(社会勉強も含む)」というのが感想です。私はBiology, Chemistry, Mathematics, Further Mathematicsの4教科を選択していたのですが、1コマ90分のレッスンが週に12コマ程度あったと記憶しています。本当はFurther MathsではなくPhysicsをとりたかったのですが、時間割の関係で叶いませんでした。また、音楽が好きなので選択したかったのですが、私の学校にはその選択肢はありませんでした。私の通っていたのはかなり自由な雰囲気の学校で、一応9時から12時は授業がなくても学校にいて自習をするというルールがありましたが、それ以外は自由でした。私が選択していた科目は午後に集中していたこともあり、学校にはだいたい9時から19時ぐらいまで滞在していました。授業のない時間は課題をして過ごしていたので、学校外ではあまり勉強をしていませんでした。週末もです。(金土日はお小遣い稼ぎのために17時から23時ぐらいまでバイトを入れていました。時々日曜の日中も働いていました。)月曜から木曜はお友達とひたすらMTVを見て喋っていたり、ジムに行ったりしていました。日本の高校生の生活とはだいぶ違っていたと思います。時間割が詰まっていなければ12時に学校に出て町での用事を済ませて、授業に間に合うように15時に戻ってくるということもしていました。

クラスの中身ですが、数学は日本と大差なかったように感じます。日本の数学の方が難易度が高く、私は日本の数学の授業の方が好きでした。(中学の数学の先生の教え方が好きだった)。生物と化学はひたすら、仮説→実験→レポートの繰り返しでした。ただただ楽しく面白かったです。1クラス10人以下だったので、実験やディスカッションもスムーズでした。

日本の医学部に入学している人でストレスを感じずにこの期間を過ごせた人はどのぐらいいるのでしょうか。医学部志望者に限らず、高校生の期間をストレスと共に過ごした人はかなりの数がいるのではと思います。私は感謝のことにそのようなストレスからは解放されていました。Aレベルのテスト形式は、しっかり準備をして臨めば、必ず点数につながるものだからです。ケアレスミスをしたとしても、その途中の過程をしっかり見て評価してくれるからです。試験も2年間の間に3回から4回にかけて行うので、「その日だけ」という不確定要素が排除されるからです。この試験の形が、「学びを楽しむ」ということを可能にしてくれて、同時に「大学に入ったらこんな感じ」というのも体験させてくれたと思います。

Aレベルは

  • コツコツ学ぶのが好き

  • 文章を書くのが得意

  • 興味があることをとことん極めたい

という人にはとても良い資格だと思います。イギリスでは就職の際の履歴書(CV)にもこの資格の結果を記入します。
もっと、日本でも認知度が上がれば良いのになぁと思っていますが、
日本はIBになりそうですね。AレベルやIBだけで日本の大学に入学できるシステムが広がれば、海外からの留学生も増えて、日本の大学の底上げにも繋がるのかな、なんて思っています。

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