アイスランドに行った話
父親が2回目の退院をしたので、気晴らしに退職金の一部でアイスランドに行きました。
一人暮らしの時は毎年沖縄や伊豆の離島にバカンスという名の「冒険」に行っていて、滝を求めてジャングルを歩いたり、イルカを求めて漁船に乗り込んだり、体験スキューバという名の本格的なスキューバをしたり、ボートが遭難したりと、まあまあ荒っぽいことをしてました。
さあ本題です。
アイスランドです。
アイスランド、それはイギリスの北、北極近くにある小さい島国です。
あまり馴染みはないと思うので少し解説をすると、火山で出来た島で、岩だらけで土壌がありません。なので特産品は海産物と羊毛、しかしPC普及率は当時90%超えで、IT関連の仕事で近代化は日本と同じ程度。
気候はメキシコからの風が届くため、アイスランドという名前のわりに北欧やアラスカより暖かいです。
観光名所はオーロラ、ギャオという地質プレートの割れ目、間欠泉、クレーター、温泉、滝、氷河などたくさんあります。
私の目的は火山とギャオでした。
日本からスカンジナビア航空でデンマーク、乗り換えてアイスランド航空で現地に着きます。約18時間かかります。
あ、ちなみに一人旅です。
夜中に到着したため、持っているのはホテルまでのバスの乗車券と日本円のみ。そして着いた日は土曜日。アイスランドクローネはゼロです。
とりあえずバス券でホテルへ。
バスの中で緑色のモヤモヤが見えました。オーロラの出来始めです。
後ろを向くと真っ暗闇の地平線に白い光が。午後11時の日の入りです。幻想的でもあり、科学的でもあり。
バスは無事にホテルに到着、予約した部屋に行ってツアーバウチャーを貰うのを忘れてたので、フロントへ戻ろうとしたら部屋の鍵が閉まらない!!
急いでフロントに行き、ツアーバウチャーをくれと言ったら英語がわかんねえ姉ちゃんで、ツアーバウチャーだよ!!とケンカになり、マネージャーが出てきてようやく受け取り。だけど鍵が壊れている…。
マイルームキーイズブロークン!!
英語がわからないフロントの姉ちゃんを連れて部屋に行き、鍵を見せたら「コツがある」とのことで、コツを教わりへとへとになりました。
その間に近年稀に見る大きなオーロラが出ているとも知らず……。
空腹だったため24時間営業の売店でサンドイッチと忘れてきた歯磨き粉を買うため、ロビーのキャッシングマシンでとりあえずvisaカードでアイスランドクローネで約5万円を引き出し、明日の早朝にギャオ見学があるからと寝ました。
2日目
翌日集合場所に行ったら「雪でギャオは見られないから同じ値段の地熱発電所と牧場見学とランチのツアーでどうだい?」と言われ、タクシー代を出すから集合場所へ行ってくれ、と。
がーん。
集合場所は馬の牧場で、しばらく毛脚の長い馬と戯れ、餌のパンを食わせ、そこのクラブハウスでしばらく待つと、ガイドさんとイギリス人夫婦が現れランクルに乗って出発。
英語はヒアリングはわかるものの、喋るのは苦手なもんだから、多少の会話しか成り立たず……。
しかしガイドさんが調子に乗って雪の中をランクルで走り回っていたらいきなりドスンときました。タイヤが雪で隠れていた岩の間に入りこんで遭難しました。
申し訳ないが大爆笑した。
ガイドさんは焦りまくりだけど、客は大爆笑で一気に仲良くなりました。みんなでランクルを押したりしたけどダメ。その後携帯電話で助けを求め、牽引してもらってツアー再開。
初めて見る地熱発電所で記念写真を撮り、日本でもやれるんじゃね?とか思いながら次の目的地の牧場へ。
寒いから牛は全部牛舎にいてつまらなかった。本当につまらなかった。ガイドさんが「彼女は1人で日本から来たんだ!」と牧場のおばちゃんに紹介してくれたけど、もう29歳なのですごくはない。
牛舎から少し離れた場所に牧場経営のしょぼいレストランがあり、そこでランチタイム。
メニューはグリーンピースとニンジンのグラッセと鶏肉を焼いたやつと、パン。
そうか、フォークとナイフで食べるのか。
無理。
割り箸を持参していたので鶏肉を切る以外は箸を使ってたらみんな珍しかったらしく、豆を摘むだけで「おー!」と驚いていたので、割り箸を渡して教えました。
次はなんか市内までの車内見学で、小さいビニールハウスでトマトやらじゃがいもやらを作ってるのを見せられ、野菜は育たないからほとんど輸入と知りました。
ツアーが終わってぐったりとホテル内を歩いていたら「日本のかた?」と60代ご夫婦に話しかけられました。日本人いたー!!
「良かったらレストランに夕飯を食べに行かない?」と誘われ、OKして2時間後にロビーで待ち合わせ。
ペルトランというちょっとお高めのレストランだったから、持参した服の中でもキレイなやつを着て行きました。
北国の味はしょっぱいと青森出身の友達に聞いていたから予想はしてたけど、血圧がヤバいんじゃないかぐらいしょっぺえ!!
ロブスターのビスクもテンダーロインステーキもしょっぺえ!
お会計で1万円ぐらい(物価が高い)かなと思っていたら、ご夫婦にご馳走になってしまいました。申し訳ないような嬉しいような。
翌日はセスナで火山を見る予定だったので、明日の午後から一緒に街を見学しましょうと約束してお別れしました。
ちなみにご夫婦は前日のオーロラを堪能したらしく、写真をたくさん撮ったから見せて貰うことになり、住所を交換しました。(デジカメなんかない時代)
3日め
大雪で火山ツアー中止。中止の証明書を貰いに飛行場の事務所で手続きをして、日本に帰ったら旅行会社に返金してもらえる。
午前中暇になったからホテル内を散策したり、売店でお土産を買ったりしているうちに待ち合わせ時間になったから、合流してバス(運転手さんが美女!)に乗り、街へ。
デューティフリーのお土産屋さんやら、今では日本にもあるH&Mや、H&M傘下のアクセサリーショップや、スーパーマーケットで買い物をし、切手が可愛いから郵便局に行き、それからカフェへ。
隣の席に赤ちゃんが来てて、名前を聞いたら「アレッカ・ヘーゲルよ」というわけで、Rの発音をうまく言えるまでアレッカの母ちゃんに特訓を受け……。
なんだったんだ、Rの発音特訓は。
夕飯はどーする?と聞かれましたが、その日の夕方にレイキャビクからケフラビークに移動して違うホテルに泊まる予定だったから、いったんホテルに戻って移動の準備をしてロビーに。
ロビーでまったりとお迎えを待っていたら「金がない……」と悩んでいる日本人大学生男子に遭遇。聞いたらスノボの選手権に出たものの途中で負けてしまい、帰る金もないとか。
地図を渡してマックで飯を食えばよろしい、ホテルも安い所があるから、宿泊先が決まったら自宅にコレクトコールして、お金を工面してもらいたまえ、とテキトーなアドバイスをして私はお迎えの車に乗ってブルーラグーンという温泉地に向かいました。
ブルーラグーン
それはロマンチックな響き。
実際は地熱発電所が出す熱で温泉を沸かすただの温水プール。
しかし泉質は皮膚病に効能があるため、アトピーの私には楽園。
ただホテル(というかコテージ)に着いた日はもう閉館時間近くで、荷物を部屋に置いたら食堂でしょっぺえまずいメシを食い、初めて見る形の自販機でコーラを買い、まだ明るい外で写真を撮ったり、溶岩石にびっしり生えた苔に足をズブズブ入れて遊んだり、ついでに苔に寝そべったりして自然を満喫。
ホテルに入ると金髪イケメンのおじさんが「あれ?日本人?」と話しかけてきた……。
またか……。
どこに一人旅をしようが必ず話しかけられる自分が憎い。
良かったら明日は一緒にブルーラグーンに行きましょうと誘われ、断れない自分がまた憎い。
4日め
翌日はおじさんを通訳代わり(ひどい)にしてブルーラグーンへ。
水着必須のため着替えて温泉に入るまでが地獄の寒さ。
マイナス5度を水着で歩けと?
仕方がないから走ってドボンと入り、なるべく水温が熱めのとこでしばらく待機、温まったところでおじさんと話しながら6時間ぐらい堪能。おおう、アトピーに染みるぜ。
腹が減ったので併設のカフェでクラブサンドを頼んだら日本の倍の量。食えるか、こんなに!しかもポテトフライまで山盛りにしやがって!水をくれ!(アイスランドは水質が良いため水道水が飲める)
満腹すぎて温水プールに入ったらゲロりそうだったんで、お土産屋でアトピーに良さそうな泥やら入浴剤やらを買い込み(全部自分の)迎えの車が来るまで夕飯の相談を。
食堂のメシはまずいからホテル併設のレストランに決定。
どうやらフランス料理らしい。
私はアイスランド名物のアンモニア臭満々のサメの燻製を食いたかったのに。
とりあえずフレンチで我慢しておじさんの昔話を聞きつつ食べていたのだが、頼んだデザートのシャーベットが来ない。待てども来ない。おじさんが英語で事情を話したら、忘れてた上にシャーベットがないからと、満腹の私にイチゴやら生クリームやらなんやらが特盛のケーキを出してきやがった。
食えるかこんなに!!
食ったけど。
ホテルに戻りフロントというか、受け付けというか、そんな場所で明日の帰国について送迎車を頼んだら「あなたの朝ごはんは5時に用意するから6時には出られるようにしてね」なんて言われ、日本語で「え!5時!?」と言ったら「イエース」とか言われ。
その場でおじさんとは住所を教えてお別れをし、(おじさんはデンマークの和食板前)荷物を整理して、余ったカイロを寄付しました。カイロないのね、寒いくせに。
帰国
翌朝5時にパンとスクランブルエッグを食べて、空港への送迎車で泣きながら「帰りたくないよー」とお姉さんを困らせ、寂しく家路につきました。
アイスランドは「なんにもないがある」場所で、東京みたいななんでもありすぎの場所と違って私には楽園でした。
特に親が介護必要だったりする東京には帰りたくないし、いっそ不法滞在しちまおうかと思ったぐらい。
アイスランド人はアジア人を小馬鹿にしたり、差別したりしてて微妙だけど。
またいつか行きたいです。