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ペンギン・マイウェイ

青山一丁目から乃木坂へ向かって歩いていくと、六本木交差点が見えてくる。

その途中、メルセデスベンツのショールームが右手から飛び込んでくる。
ただのショールームではなく、お洒落なカフェバーも併設しているのがまたカッコいい。
陸・海・空の先駆者としの自負を表すあのエンブレムも、この街だとなおよく似合っている。

春宵肌寒いため足早に通り過ぎようとしたが、チラッと目をやると、美しいお姉さんが店内でシャンパンのような飲み物を流し込んでいた。
彼女のもたれかかる先が鈍い銀色の無機質な"ネイビーチェア"だったのを見逃さなかったので、少し立ち止まる。

ネイビーチェアは、アメリカで鋳造金物を製造するエメコ社が、1944年に米軍から「潜水艦内で座れる椅子を製作して欲しい。」と依頼を受けて完成させた作者不詳の名作椅子である。

アルミニウム合金で軽量かつ強靱な椅子だか、座面と背もたれが意外と有機的で、見た目に反し金属らしからぬ優しさで体を包み込んでくれる。

1脚ずつハンドメイドで製作されており、8時間かけて磨くことでその鈍い銀色を演出している。

それにしても、あの時見た綺麗なお姉さんはとてもネイビーチェアが似合っていた。
何故だろう?
都合よく何かを飲む仕草も相まってか、謎を解いてごらん、と挑発的に言われたような気がするがさっぱり見当がつかない。

話は変わるが、ネイビーチェアを他の場所でもよく見る。

以前、ペンギン体操という謎の踊りを保育園で吹き込まれた筆者の娘が、一時期ペンギンにハマったためペンギンに会いに行こう!となった。

向かう先はスカイツリーの麓、すみだ水族館。
都心型の小規模水族館ながら、かなり見応えはあり連日家族連れで賑わっている。

メインは中央の巨大プールを縦横無尽に泳ぐ52
羽のマゼランペンギンである。

プール周囲は人が集まりやすい設えになっており、横からも上からも覗き込める水槽仕様のため大人も結構楽しめる。

館内にはカフェがありペンギンを見ながら飲食できるのだが、外から飲食物の持ち込みもOKなので、お弁当を持っていけば屋内ピクニックもできる。
雨の日とかだと特にありがたい。

そして、ペンギンプール横のカフェ・ダイニングスペースの椅子が全てネイビーチェアなのだが、元々潜水艦内用に作られた椅子でもあるため水族館内によく馴染んでいる。

筆者家族はよくペンギンに会いに行くため年パスを持っている。
雨の日であれ外出したい子供と、とりあえずどっか連れて行きたいけど雨なことに葛藤する親のニーズを満たしてくれるため、水族館さまさまだ。

あと、すみだ水族館はペンギン相関図なるものを発表しており、個体1匹ずつ特徴があるためマイ推しペンギンをもつペンギンファンも多い。

正直、筆者はまだ個体ごとの違いがあまりわからないのだが、ペンギン自体には興味がある。

本来は空を自由に飛び回るはずの鳥類なのに、海中を猛スピードで泳ぎまわって魚を捉えることに特化し、陸にあがればヨタヨタと歩く愛らしい姿を見せてくれる。

人に於いても、あらゆる方向の先駆者となるのは難しそうだか、何か一つ(ペンギンだと海を泳ぐこと)に特化したものがあるのは大変な強みだなとしみじみ思う。

潜水艦のような美しい流線型で泳ぐペンギンを見て、筆者も綺麗なお姉さんとネイビーチェアの相関の謎、はては研究にでも挑んでみようかと浅い思考で考えてみる。

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