見出し画像

嘘つきあって抱きしめあって

最初に嘘をついたのは僕だったか君だったかなんて
もう随分と昔の事だから覚えてないけど

最後病室のベッドの上で「僕がいるから大丈夫」
これが最後に僕が君についた嘘だった。

【嘘つきあって抱きしめあって】

まだ10代だった僕達は
良い事も悪い事もわけわかんなくて
倫理観の成長過程を一緒に過ごす中で
多分、今だったら
人からえらく非難されるような事も沢山あった。

「これ出来たら楽しいよね!」

そんな事は出来るわけがないって周りの人が言えば言う程、
君がキラキラしていくのを、僕も必死で追いかけた。

「星屑そんな事で泣いてるの?」って馬鹿にして笑ってた癖に

「あの時の俺は知らんかったんや、気持ちわかってやれなくてごめん」

当時掲示板で叩かれまくってた僕を笑ってた君は
君が叩かれる順番になった時に、わざわざ謝りに来た。

まだ20代だった僕達は
自分の成功だけを考えてて

誰かに嫌われないように。
したたかにやろうって約束をした。

実は男が好きなんやって僕が言ったとき
「恋愛は自由やと思う」とお酒の席で。

次の日突然、僕の家まで来て
「星屑に嫌われたくなくて、昨日嘘ついた…ごめん。
俺はお前が同性愛者なの嫌や…頼むから元カノとより戻してくれ」
って泣きそうな顔で言ってきた。

「考えとく」って嘘ついてごめん。

「星屑はいつ見てもスーツやから買ってきた」
カジュアルな普段着を紙袋2つぶん、大量に買って来てくれた。

開けてびっくりしたけど
全部Sサイズやった
君の記憶の中の僕は10代で止まってるのかな?と笑った

あとスーツしか着てなかったのは
君も他の人もあんまりにもカジュアルやから

それじゃ大人と戦えないと思ってさ、
バランスとらなきゃと背伸びしてスーツを着てたんや。

僕が東京に行った日に
新幹線に乗って席に着いた瞬間に
【頑張れ、やけどしんどかったらいつでも帰ってこい】
ってそのメールで、沢山の夜を乗り越えた、有難う。

こうやって考えたら20代はそんなに一緒じゃなかったんやな
もっと傍で色々教えてもらうべきやった。

30代になった僕達は
君がメディアに出まくるようになって
少しだけ距離が空いてしまったような気持ちになって

何年かぶりに会った時に大喧嘩した。
多分、僕は君の成功に嫉妬してたんやと思う。

「大丈夫や、心配すんな」

が口癖の君から

【すまん無理かも】ってメールが来た日

スタッフ全員巻き込んだドッキリなんやって思いたくて
君が居ないかもしれない未来がほんまに怖くて
あ、今思い出しても、まだ全然無理みたいや。

そういえば、ご飯食べに行った時、
2階の個室で呑んでたら
店長さんからサインをお願いされて

「全然書きますよ」って言った君じゃなくて
僕に色紙を渡してきたの
今思い出しても、ざまぁみろって思ってる。

君から任されたお店さ
本当はうまくいってなくて

けど、数字だけ見たら順調そうに見えるからさ

「やっぱりお前に任せて良かった」って言ってくれてたけど

ほんまは全然無理やってさ…

あのシェフ辞める言い出してたんよ!笑
けどさ、そんなん病室で言える訳無いやろ?笑

「誰やと思ってる?俺がいるから大丈夫」って嘘ついたごめん。

いつかあの場所でまたなんかやるからさ
それまでもう少しだけ、待ってて欲しい。

嘘つきあって抱きしめあって

そうやって考えたら
物理的に抱きしめた事なんか一度も無いけど。

嘘つきあって抱きしめあって

君が居ない毎日は
やっぱり凄く厳しいし、辛い日もあるけど

嘘つきあって抱きしめあって

大丈夫やから心配すんな。

僕のこれはまだ、嘘じゃない。

星屑NFT

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?