電子カルテ「全ての医療機関に導入を目指す」と国が宣言した件を解説
はじめに
みなさんこんにちは!
日々、医療介護データに関する情報を発信している まじめな所長 です。
先週のツイートの中から、特に注目のトピックスについてピックアップして解説します。
電子カルテ「全ての医療機関に導入を目指す」と国が宣言!
6月2日に開催された医療DX推進本部にて、電子カルテについて「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において(中略)電子カルテの導入を目指す」と記載された工程表(案)が示され、話題となりました。
今回は、この件について解説します。
日本の電子カルテの普及は、国際的に見て遅れている
現在、電子カルテはどの程度の医療機関で使われているのでしょうか。
令和2年の医療施設調査の結果によると、日本の電子カルテの普及率は、一般病院で57.2%、一般診療所で49.9%です。
病床規模別でみてみると、400床以上の大病院では普及率91.2%と高い普及率ですが、200床未満の中小病院では48.8%で低い普及率となっています。日本の病院のうち、約70%が200床未満の中小病院ですので、まだまだ電子カルテの普及は道半ばと言えます。
一方で、海外の電子カルテの普及率は日本に比べて高いといわれています。
厚生労働省の「諸外国における医療情報の標準化動向調査報告書」では以下のように書かれています。
アメリカの普及率は、病院 80~100%、診療所 80%です。
スウェーデンは、病院、診療所ともに 90%です。
イギリスは、病院、診療所ともに 99%です。
シンガポールは、病院100%、診療所 80%です。
国際レベルに追いつくためにも電子カルテの普及促進が必要となっています。
3ステップで、電子カルテを全医療機関に導入
電子カルテを全医療機関に導入するまでには、以下の3ステップが想定されています。
ステップ1 電子カルテの標準規格化
現在、電子カルテは開発ベンダーごとに仕様が異なり、院外でのデータ連携が困難な状態にあります。
現在の医療は、「病院完結型」から「地域完結型」医療に変化してきており、医療機関同士が役割分担しながら、地域として患者に最適な医療を提供することが求められています。
しかし、医療機関通しでの情報のやり取りは、紙やFAX、口頭が主流であり、充実した情報連携はできていません。
そのため、患者が同じ情報を複数の医療機関に説明しなければいけなかったり、医療機関側が情報伝達不足により適切な医療を提供できなかったりしています。
電子カルテの情報が標準規格化されて、医療機関通しで情報連携ができるようになれば、医療の質がグッと高まると言われています。
いきなりすべての情報を標準規格化することはできないため、まずは、3 文書 6 情報(診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報(救急及び生活習慣病)、処方情報)の共有を進め、順次、対象となる情報の範囲を拡大していく方針です。
ステップ2 標準型電子カルテの開発
情報の標準規格化ができたら、標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ(標準型電子カルテ)の整備を行っていくこととされています。
2023 年度に必要な要件定義等に関する調査研究を行い、2024 年度中に開発に着手し、一部の医療機関での試行的実施を目指すようです。
現在の電子カルテは、各開発ベンダーが独自に開発しており、導入コストが高額となっています。
医療機関のコスト負担が高く電子カルテ導入が進まないとの声も多く、標準型電子カルテでは医療機関のコスト負担が軽減されることも重要視されています。コスト軽減のために、国が標準型電子カルテを開発・提供することも含めて検討が進められています。
ステップ3 すべての医療機関に電子カルテを導入
電子カルテ情報が標準化され、安価な電子カルテの開発も完了したら、いよいよすべての医療機関に電子カルテの導入を行います。
ここまでの期日を「遅くとも2030年」としています。
すべての医療機関に電子カルテを導入するためには、コスト削減に加えて、サイバーセキュリティの確保も非常に重要と考えられています。システムに詳しい人がいない医療機関も多く、近年ではサイバー攻撃の被害にあう事例も多発しています。
これから様々な課題を乗り越える必要があります。
国が思い描く医療DXの将来像とは?
すべての医療機関に電子カルテを導入するだけでも、かなり大変なことのように思いますが、国が思い描く医療DXには、さらにその先があります。
それが「全国医療情報プラットフォーム」です。
全国医療情報プラットフォームは、医療介護に関するあらゆる情報を統合した情報基盤です。医療介護に関するあらゆる情報を統合し、利活用することで様々なメリットが生まれると考えられています。
患者はマイナポータルを通じて、自身の病歴確認やスムーズな行政手続きを行うことができるようになります。
医療機関や介護施設は、患者や利用者の情報を事前に知ることができ、問診の無駄を解消できたり、質の高い医療介護の提供がしやすくなったりします。
民間企業にもデータベースを開放することで、新しい便利なヘルスケア事業が創出される可能性もあります。
かなり壮大な計画であり、実現可能性について懐疑的な声もありますが、何とか成功させてほしいものですね。
今後の、医療DXに注目です。
今回は『電子カルテ「全ての医療機関に導入を目指す」と国が宣言した件を解説』というテーマで書きました。
いかがでしたでしょうか。
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