新型コロナウイルス(COVID-19)について分かりやすく解説してみる

コロナウイルスのニュースが毎日流れており,感染拡大傾向は収まらず不安が広がっています。

ニュースでは重症化したとの報道があり,「自分がもしなったら」「子供がなったら」「家族がなったら」と心配が尽きないかと察しております。

診療の中で,コロナウイルスについて分からない事ばかりで不安を感じていらっしゃる方々の存在を身を持って感じております。

そんな方に向けて,少しでも知識,情報の補填が出来たらと思い執筆しています。正直全て正確な記載が出来ているかは分かりません。もしより詳しい方がいらして,間違いなどがありましたらコメントよろしくお願い致します。

コロナウイルスとは

コロナウイルスは実は以前から存在しています。元々4種類程存在しており,今回の新型コロナウイルスはCOVID-19と呼ばれていますが,コロナウイルスの亜型になります。元々存在していたコロナウイルスは,風邪の原因の10〜15%を占めているウイルスです。風邪とはウイルスが上気道(簡単にいえば喉のあたり)に感染している状態です。風邪の原因となるウイルスは数百種類存在し,そのうちの10〜15%がコロナウイルスなんですね。

コロナウイルスは呼吸器感染症

コロナウイルスは呼吸器感染症という理解を持ちましょう。なぜこの理解が必要かというと,感染すると身体のどこに異常が起きるか分かるからです。実は診療をしていますと「脳や,その他の臓器にも影響をする」と思い不安を募らせている方が結構います。「敵を知り,己を知れば百戦危うからず」ではありませんが,多少不安が減るはずです。

呼吸器感染症とは,呼吸に関係する部分に感染するということ。下記図をご覧ください。

画像1

これがいわゆる「呼吸器」の図です。呼吸では鼻,口→気管→肺へと空気が取り込まれます。この経路に感染するものが「呼吸器感染症」です。

画像2

まず上記の図の部分に感染すると,いわゆる風邪ですね。医学的には「急性上気道炎」と呼ばれます。風邪はご存知の通り重症化することはほとんどなく,自然に良くなりますよね。たまに「風邪をこじらせた」と言っている方がいますが,そういう方が下記図になります。

画像3

気管支と呼ばれる空気の通り道にまで,炎症が広がってしまったんですね。気管支が炎症を起こすと咳などの症状がひどくなります。察しの良い方はもう分かるかと思いますが,さらに進行すると・・・そうです。「肺炎」になるんですね。コロナウイルス=肺炎というイメージもあると思いますが,コロナウイルスで重症化する=肺炎ということになります。

画像4

気管支からさらに奥にある「肺」に炎症が波及し「肺炎」となります。これが呼吸器感染症の最重症の状態となります。

肺炎になると肺の機能が低下してしまうので,酸素を上手く取り込めなくなり「息が苦しく」なっていきます。この状態までいくと,病院で酸素を投与するという処置が必要になる場合が多くなります。

以上が呼吸器感染症の簡単な説明でした。今回お伝えしたいのは,COVID-19と呼ばれる新型コロナウイルスも基本的にはこの「呼吸器感染症」であるということ。つまり『急性上気道炎→気管支炎→肺炎』という経過を辿ることが多いということです。ですので,例えば「脳」がやられたりとか,「胃腸」がやられるというようなことは基本的にありません。最初の症状としては,風邪ですので発熱,咳,鼻水,喉の痛み,倦怠感などです。悪化していけば,咳の増悪,痰が増える,息が苦しくなるといった症状が出てきます。

特殊な事例も

しかし,今回のコロナウイルスでは典型的な呼吸器感染症と少し異なる所見などの報告もあります。例えばテレビの報道でありましたが,「味覚・嗅覚の異常」などですね。また海外の患者の例では,発熱などないにも関わらず肺のCTで異常所見を認めたりといった感じですね。症例の報告論文などや,統計なども増えていっているので徐々に解明されていくと思います。決して楽観視出来る病気ではありません。

検査及び治療について

治療について理解すると,検査の理解が深まります。コロナウイルスに感染し,軽症(風邪症状のみ)の場合,できる治療は対症療法と呼ばれるものになります。対症療法とは,漢字の通り「起きている症状に対して治療する」というものになります。つまり根本的な治療ではありません。具体的には口から飲む薬などで治療します。「解熱・鎮痛薬」などですね。現段階でコロナウイルスに対する特異的な治療薬が出ていない為仕方がありません。「気管支炎」のような状態になったとしてもほぼ治療は同様です。

肺炎まで進行すると,上手く酸素を取り込めず身体の酸素の値が下がってきます。酸素の値が下がると,生命活動に危険が生じるので外部からの酸素の投与などが必要となります。ですので,肺炎までいくと重症という判断となり入院の上酸素投与の処置が必要となります。 

現段階では,抗HIV薬や膵炎の薬が効果があるなどの報告があったりしますが確実に効く薬は見つかっていません。ですので,コロナウイルスを根本から叩く治療法がないので,医療により身体の補助をしながら自分の免疫力で治癒を目指すしかないのが現状です。

まとめますと,重症の肺炎の状態にならないと入院しても出来ることがない。しかし現在の状況では,コロナウイルスが陽性になると全例入院しなければいけない。軽症の方を入院させても出来る治療は,自宅にいるのと変わらない。だが軽症の方が入院することで,重症の肺炎で酸素投与が必要な方が入院できなくなる可能性がある(医療崩壊)。

僕も一個人の医師であり,国としての大きな施策,疫学的な考えなどが得意なわけではありませんので100%正しいとは言えませんが。

僕の認識

結論から言えば,過度に心配する必要はないと思っています。というのも,上記で説明したことを思い出してください。風邪というのは原因となるウイルスが数百種類いると言いました。その中で「RSウイルス」と呼ばれるウイルスがいます。このウイルスは成人が感染しても軽症の風邪として自然に良くなります。しかし,子供が感染すると中には肺炎まで進行し重症化することがあります。それは,子供の方が免疫力が低いからだと言われています。

つまり,どんな呼吸器感染症のウイルスであっても爆発的に感染が広がれば重症化する人は出てくるということです。高齢者,持病のある方(糖尿病,免疫抑制薬を飲んでいる,ヘビースモーカー),子供などはリスクが高いです。コロナウイルスでなくとも,リスクの高い方が肺炎になれば重症になる可能性は高いです。ですのでコロナウイルスは「未知の致死的なウイルス」ではなく,「感染拡大に注意が必要なウイルス」かと思います。未知の致死的な過去の例は「ペスト」などです。かかれば亡くなってしまうといった恐怖がありましたが,それとは少し異なります。

国民全員がしっかりと予防の意識を持ち感染を広げないことが重要です。基本的な考え方を示したつもりなので,誤っている箇所がございましたら申し訳ありません。医者をしていると当たり前のことも,患者さんからすると役に立つことがあると診療を通じ感じた為投稿しました。少しでもお役に立てば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?