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畏怖か崇拝か、それとも・・・/Militia - The Face Of God [Old Europe Cafe]

Artist: Militia
Title: The Face Of God
Label: Old Europe Cafe
Format: CD
Release: 2019


アンビエント、ノイズ、インダストリアル、パワーエレクトロニクスをキーワードに1980年代後半より今も続いている老舗レーベルOld Europe Cafeが再発した、1989年より欧州で活動しているインダストリアルグループMilitiaのアルバム。

殺伐としたインダストリアルなサウンドスケープに儀式的なパーカッションが絡み、神聖な祈りの代わりに冷静な詩のような言葉が、眩い黄金の代わりに粗悪な鉄が供物として捧げられ、それでも超越した何かに憧れを持つように荘厳なクラシカルな雰囲気とテクノ的な疾走感が漂う本作。

体温のような有機的な温かさではなく溶鉱炉の中にある溶けた鉄の熱量と心の奥底が凍てつくような容赦のない冷たさが同居しているようにも感じる。さながら、ウィリアム・ブレイクの「無垢と経験の歌」にある「神の姿/The Devine Image」と「ある神の姿/A Devine Image」の見事な対比とその落差の喪失感を彷彿とさせるというか。目が見ているものと心が望むものの乖離が甚だしいというか。

絶え間なく鳴り響くパーカッションと金属音の繰り返しは中毒的とも言える催奇性と得も言えぬ洗脳感をきっと感じさせてくれるだろう。心臓を鷲掴みにするその手は誰の手なのだろうか。平穏や慈愛ではなく心の奥底に深く隠れている怒りの感情に強く同調し、やり場のない感情を空虚そのものに差し向ける、錆びた鉄の匂いと冷たく乾いた肌がよく似合う修行僧。


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