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今は亡きショッピングモールに思いを寄せて/Sted E. Vapn - Miracle City Mall, Titusville, FL. 1989​.​ [Illuminated Paths]

Artist: Sted E. Vapn
Title: Miracle City Mall, Titusville, FL. 1989​.​
Label: Illuminated Paths
Genre: Vaperwave, Field Recordings
Format: Cass×2
Release: 18th Jul 2021


アメリカ合衆国フロリダに拠点を置く、ヴェイパーウェーブ~ヒップホップレーベルのIlluminated Pathsより、フロリダにあった今は亡きショッピングモールMiracle City Mallに思いを寄せた本作。

Miracle City Mallは1969年に創業し、1970~1980年代にかけて繁栄し、1990年代初頭までは人気があったが、人口動態や消費者行動の変化、米国の経済事情、周辺のモールなどの経済競争の激化により、衰退を余儀なくされ、2013年に閉店したらしい。

既に閉店したショッピングモールというテーマは、ヴェイパーウェーブの骨格である「大量生産と消費、時間の堆積による忘却、大衆文化に対する批判」そのものを象徴している。かつて賑わいを見せていたショッピングモールに対する郷愁の念と雑踏に没入するかの如く追体験を、哀愁を添えて感じさせてくれる。おおよのところ、日本であろうが海外であろうが、人としての在り方は例え考え方や感性が違ったとしても、似たようなものがあるのだろうかと考えさせられる。どことなくチープなBGMが店舗の中で流れ、行きかう人々の会話がすれ違う。

フィールドレコーディングの性質として興味深い点は記録である。歩きながら話しながらなどの何かしらの行動をしながらだと周囲の音は聞こえているはずだが意識に残らない。しかし、記録という観点および音楽として聴くと、気にも留めなかった周囲の音を漏らさずに聴いてしまう。スクリューされたナレーションも相まって、郷愁と哀愁がより強調されて感じられる。

異国のショッピングモール、それも過去の遺物の中へタイムスリップを体験する際に。程よい雑音感が生活感を感じさせてくれる。ヴェイパーウェーブが何なのかを知るには分かりやすい作品群。


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