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【Event】ZEN大学 教育システムに新しい風を吹かせられるか

2024年4月28日、29日の両日、千葉県千葉市の展示会場である幕張メッセにおいて「ニコニコ超会議2024」が開催された。
本記事ではその中で出展を行っていた「ZEN大学(仮称・設置認可申請中)※以降ZEN大学と表記」について取り上げていく。


これまでと一味違う学習方針を打ち出すN高とS高

 日本国内にデジタル技術が浸透し、教育機関においてもタブレットの利用などが積極的に行われる昨今。
鳴り物入りでハードウェアが投入された所で教員はその機材を使いこなす事が難しく、結果として新しい教育体制を十全に全ての教育機関が敷けている訳ではないのが現状である。
それは何もここ数年に限ったことではなく、教育機関にインターネットが進出した2000年代であってもその価値を図れる教職者がどれだけ居り、そして教育システムに組み込む重要性を見据えられていたのがどれだけ居るかを思い返してみれば言わずもがなであろう。

 とはいえそういった国内事情に対し国際社会は待ったをかけてくれはしない状況である。
海外におけるITベンチャーの勃興の勢いは凄まじく、様々なサービスの枝葉に至るまでデジタル化を推進する様な企業が多く見られる。
かつてはデジタルのデの字も見られなかった配送事業者が、現在ではその枝葉末節に至るまでデジタル化の恩恵を受け、そしてその隅々に膨大な数の企業が絡んでいる事がわかりやすい一例だろう。
ロジスティクスのデジタル化は、ICT教育の重要性を我々に見せつける格好の教材と言ってもいい。

 そんな情報産業に根ざした教育方針を執る学術機関の一つが「N高等学校・S高等学校」である。
学校法人角川ドワンゴ学園が運営するこれらの学校は、通信制高校として全国様々な所に生徒を擁している。
その教育方針や扱うカリキュラム、果ては課外活動に至るまで既存の教育機関とは大きく違う方針を打ち出しており、特に今年もニコニコ超会議への参加を果たすなど既存の企業や団体との交流も活動の一環として行える場に参加出来るユニークさを備えている。

 しかしこのN高とS高はユニークな教育方針であるが故に、その先の受け皿の確保が困難である事も否めない。
現状大学の多くは通信制ではなく、そしてまた必要な科目として各種教養を初めとした広範な科目を学習する必要がある。
また新型コロナウイルス感染症の影響が残るとはいえ、次第にキャンパスへの通学を是とする体制に戻りつつある大学も増えてきている。
もちろん放送大学の様な通信制大学は存在するが、その在校生の大半は社会人でありエスカレーター式に受け皿となれる様な機関ではない。

 この帳を開こうとしているのが、ZEN大学という機関である。


新しい学びの為の積極的な通信制大学という在り方

 ZEN大学は2025年に開学が予定されている大学である。
その学習ジャンルについては既存の大学と大きく異なる点が多い。
大体の大学における教育カリキュラムの方針として、先述した教養科目や運動、第二外国語といった要素を含むのが一般的である。
特定の学科であればそこに専心する様な内容を主軸とし、いわば「その大学のその学科の特色を持つ、一般科目を中心としたややゼネラリストめいた専門学習を行う人材」が育つ事になる。

 だがしかしZEN大学はそのアプローチからして違うというのである。
関係者の弁にはなるが、そのカリキュラムは学科に縛られない横断的な学習を可能とする。
現在公式サイト上でも公開されている情報では「数理」「情報」「文化・思想」「社会・ネットワーク」「経済・マーケット」「デジタル産業」の6つの分野が用意されている。
これを特にジャンルにしばられる事なく、学生が学びたいように学ぶ事が出来るシステムを用意しているというのだ。
また外国語教育については外国語の習得以上に「外国語を利用できるツール面の教育」を重視するといった、ソフトウェアを用いる実践的な方針を敷くようである。


 AI研究者である東京大学の松尾豊教授と連携したカリキュラム、あるいはユーザーの創作サイトであるPixivとも深く連携していくと発表している同大学。
その奥底にあるのは、N高やS高のブラッシュアップであるという。
先述した通り、N高やS高の様なクリエイティブ色あふれる高等学校からそのシステムをそのまま汲み上げて進学出来る教育機関は現状存在しない。
そして通信制大学では社会人が学生として多く居るため「同年代の学生」が多く居る通信制大学は少ない。
更に日本全土における少子化やスタグフレーションによる教育費負担の相対的増大といった点を解消するため、完全オンライン授業という体制ながら年間授業料は38万円を予定している。
これは私学はもとより国立大学と比較しても費用は安く、それでいて卒業時には大学卒業資格(学士)の資格を得ることが出来る。
経済的な面などの諸事情で大学進学を諦める多くの層にとって、福音となるのではないだろうか。

 新しい教育の機会を様々な教員と共に開いていこうとするZEN大学。新しい教育の形がどう結実していくのか、熱い視線が注がれている。

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