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🍉文学サークル“お茶代”8月課題🌻 心震える1冊~ルカ・モドリッチ自伝 マイゲーム

皆さんは、本を読んでいて疲れた、体力を使ったという経験はおありでしょうか?
その理由は大抵、単純に長いかつまらない、あるいは設定や描写が細かすぎて脳内のメモリを酷使する、といった具合なんじゃないかなと思います。

しかし、ここで取り上げる『ルカ・モドリッチ自伝 マイゲーム』はそれらと違い、「感情移入しすぎて読み終わった後の疲労感が凄い」というタイプでした。
一言で言うなら「感情移入の怪物」だった……
読んでてこんなに体力を使う本はちょっと見たことない
「感動」とか「尊い」とかそんな生易しい言葉じゃ全然足りない。
冗談抜きで、読む側と語る側の境界線が曖昧になるレベル。
共感どころか感情を根こそぎ持ってかれる、みたいな。
ここまで感情移入してしまったのはやはり、ロシアW杯のクロアチアの活躍を目の当たりにしたからでしょうか。

そして、数多の栄光を手にする物語でありながら、その過酷な境遇や、本人の性格もあってかどことなくペーソスが漂っており、(特に前半は)ある意味文芸の香り高い作品に仕上がっていると思います。
さながら、『異端の鳥(ペインティッド・バード)』や『ペドロ・パラモ』的な。
もっとも、こちらは上記の話とは真逆の希望の物語ですが。

印象的だった部分をいくつか。

まず驚かされたのは、戦争、悲惨というステレオタイプで語られがちな子供時代が、いかに豊かで周囲の愛情に満ちていたかということ。
とにかく、家族や友人や恩師、周囲の人間にこれ以上は考えられないってレベルで恵まれている
普通の人だったら大抵忘れてるんじゃないか?という部分まで詳細に書かれている辺り、どれだけ幸福なものだったかが窺えます。
山出身なだけに、いろんな動物たちに囲まれて育つ姿はハートウォーミング。
実際、このオオカミのドキュメンタリーに山羊の群れを追う5歳のモドリッチが登場しているのですが、この当時から羊飼い(厳密には山羊飼い?)だったことを考えると、なかなか意味深なものを感じます。

次に、代表のエースストライカーであるマンジュキッチが非常に美味しい役どころ。
長年の戦友であるモドリッチとある日突然「冷戦状態」になってしまうのですが、腹を割って話し合ってみると、その理由が「お互いにイジメられてたと思い込んでいたから」というまさかのオチがつく。
コミュニケーションの大切さがよく分かるエピソードですが、悪童として恐れられるマンジュキッチが、可憐な印象のモドリッチ相手に怯えまくっている絵面を想像するとシュールで笑えてきてしまう

そしてやっぱりロシアW杯のくだりは、リアタイで観ていただけに激アツ。
例えばデンマーク戦でPKを止められたとき、EURO2008のトルコ戦のトラウマがよぎるも、キャプテンとしてここまで積み重ねてきた経験からそれを振り払う。
さらにPK戦に臨む際の円陣で、ラキティッチが「みんな、ルカのためにこの試合を勝つぞ!ルカは僕たちをこれまで引っ張ってきたんだ。今度は僕たちがルカを引っぱらなければならない!」と発破をかける姿は、モドリッチとラキティッチ、二人がたどってきた道のりを考えるとアッツいアッツい。

ですが……



初っ端からいきなり決勝のフランス戦後をぶつけてくるのは、いくらなんでも不意打ち過ぎませんかねぇ(涙)


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