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全力で「KJ法」をやってみた

「KJ法」とは、ブレーンストーミングした付箋をグルーピングすること、という限定的な理解をしている人も多いのではないだろうか?

川喜田二郎博士の原典『発想法』を繰り返し読むと、KJ法のキモは【A型図解】【B型文章化】まで進めることにあるということに気づく。ただ、このプロセスはけっこう難易度が高く、なかなか例示もされにくいため、教えたり共有プロセスにするのが難しい。

そこで、私が先日あるプロジェクトの振り返りをするため、本格的にKJ法を使ってみた過程を紹介しながら、私なりの「KJ法のキモ」を書いてみたい。

何回読んでも完全な理解には到達しない気がしているので、興味がある人はぜひ原典を。(および「続・発想法」にも細かい方法論がある)


Step 1 紙切れづくり

第一段階は「ブレーンストーミング」=いわゆるブレスト、量を出す作業だ。原典ではカードを用いたり、パンチカードの説明が入っているが、まあ付箋紙(post-it)でいいんじゃないかな(個人作業ならマインドマップでもえ代替できそう)。

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ブレストは本来チームでの相乗効果を狙う手法だけど、とりあえず一人で100枚ぐらい出した。プロジェクトの振り返りということで、初期からの全議事録、中間成果物、Backlogの課題一覧を時系列に沿って追いながら、1時間ぐらいかけて書き出した。記憶だけでなくきちんと「記録」を参照して、データ・事実を集めることが初期段階では必要だ。

KJ法のキモの一つに「叙述と解釈をはっきり区分する」ことがある(p103)。これは文章化の際の注意点として書かれているが、ブレスト段階でも「事実」と「意見」は何か違う形(頭に記号をつけるとか)で分かるようにしておくと後工程がぶれない。


Step 2 グループ編成

次は、書き出した項目を「親しいと感じるものを近くに寄せてまとめる」おなじみの作業だ。

ポイントは「小チームから大チームへ」:ボトムアップでまとめること。最初から大枠に入れようとしない。トップダウンではめ込もうとしない。恣意的なストーリーをでっち上げない。

束をつくったら、違う色で「表札」を置いていく。

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ちなみにこの時は付箋の枚数も少なめだったので「1段階」でちょうどいい感じに落ち着いたが、本来は重層構造にしていくほうがいい。数枚程度の項目で「小表札」をつくり、小表札の塊をいくつかまとめて「中表札」「大表札」をつくる。小表札だけで全体像を作ろうとすると、面が広くなり、なかなか「構造」を見出すのが難しい。最終的には、10個ぐらいの大項目で全体を描けるぐらいがちょうどいい。


Step 3 A型図解

次は、グループ編成の結果を紙に「図解」として清書していく。

ここからがゴリゴリの論理的思考の世界だ。グループ編成の結果を「どういう意味で関係があるか」を考え抜き、空間配置をつくっていく。大項目同士の関係性、グループの中での空間配置の二重構造。

「矢印」や「輪」を駆使して、図を描いていく。(下図は表札の略記だけで構成指定しているが、一段下がって各表札の中身も別紙に描いていくのが本式だ)

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図解の基本は「これがこうなって、こうなって、こうなる」と順を追って論理的に繋いでいくことだ。いろいろな要素が絡み合いながらも、「ひとつの筋」が見えてくれば、文章化のゴールも近い。


Step 4 B型文章化

最後が文章化だ。このときはそもそも「振り返りドキュメント」にまとめることを最終ゴールとした取り組みだった。知見を共有する場合、「図」だけでは一人歩きしない。「読めば分かるテキスト」に落とし込むことが大きな価値を持つのだ。そのぶん、この工程はいちばんしんどい。

まずは準備として、付箋紙に書いたすべての項目をスプレッドシートに書き出して……

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これを使いながらGoogle Docsに書き下ろしていった。いろいろ参考資料をひっぱってきて画像を貼ったりリンクを貼ったりする手間もかけつつ、約2時間で6000字程度の文書ができあがった。

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A型図解がある状態での書き下ろし作業はとにかく速い

筋は分かっているし、書くべき語句は書き出してある。順番を整えて、言葉と補足情報を足しながら、文章の形に書き下ろしていくだけだ。とにかく必要十分なことを書いていけば、求めていた文書ができあがる。字数制限がある場合は、書き出したものを校正していけばよい。


「文書作成のプロセス」としてもKJ法はきわめて有効だということを、私はこの取り組みで鮮明に理解した。一定の論理と情報を必要とするテキストを書くために、

1)情報をバラして書き出す「紙切れづくり」
2)紙切れをまとめる「グループ編成」
3)グループの構造を整える「A型図解」
4)書き下ろす「B型図解」

というKJ法のプロセスを踏むのがめちゃくちゃ効果的かつ効率的なのだ。この工程、複数人数でやるとさらに捗ると思うが、一人の作業としても十分に力を発揮する。


KJ法の「キモ」としては、この記事で言及できなかった山のようなTipsがある。繰り返し本を読んで勉強しつつ、毎日の仕事で「当たり前に使える」くらいにこの技法を習得できたら、相当の力になると感じている。

皆さんもぜひ、研究と実践を。

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