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オンラインライブで「〆の大合唱」はどう変わるか

コロナ禍下のライブ、聴衆は声が出せません。

客席は声出し禁止。配信を見ている自宅なら、ヘッドホンをして好きに歌えるけど、まわりの聴衆仲間の声が聞こえないから、さみしい。


たくさんのアーティストが、ライブに「合唱」を組み込んできました。The Beatles "Hey Jude"のようにエンドレスの合唱が約束された曲。the HIATUS "Insomnia" がフロアに生み出す、爆弾低気圧のような上昇気流。矢井田瞳 "Life's like a love song" や Perfume "wonder2" は、聴衆といっしょに歌って伸びやかな終わりを演出する「〆の定番」だといいます。

↑Twitterでnote仲間たちが教えてくれた「ライブ中に合唱はじまる曲」を集めました

でも、「声」が出せないライブで、この「大団円」は一体どうなるのか。オンライン配信ライブで、合唱はどのように代替されるのか?「みんなで歌いたいけど一体になれないもどかしさ、さみしさ」が、募りまくるんじゃないか?


その答案を、YOASOBIファーストライブ "KEEP OUT THEATER" 最後の曲、『群青』で見つけました。

もともと『群青』には2つの「合唱パート」があります。ひとつは1番サビ前。もうひとつはラスサビ後ろ~Outro部分です。だから、最後から数えて2曲目で『夜に駆ける』が流れ、最後は群青!とわかったとき、合唱パートがどうなるのか、注目していました。

サビ前。

知らず知らず 隠してた 本当の声を 響かせてよ ほら

声を響かせてくれたのはサポートのバンドメンバーでした。

ボーカル・ikuraさんがステージをめぐり、カメラが追い、バンドメンバーひとりひとりがクローズアップされていきます。

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この絵の前後で、ギター・AssHさんの口元が動いているのが映ったとき、「あ、歌ってくれてる。」と思いました。コーラス音源に重ねて、確かに聞き慣れない男声のフレーズが重なっている。Ayaseさんも歌う。

ドラムの仄雲さんもたぶんすこし歌っている。

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女性陣は他の曲でも微かにコーラスをあわせているのですが、群青の2番以降では、存在感がぐっと増します。やまもとひかるさんは、ベースを脇に抱え、シンセベースを叩きながら歌を重ねる。

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「嗚呼 何回でも ほら 何回でも」のパートでは、ikuraさんに、キーボード・禊萩ざくろさんが全身をうねらせてレスポンスを返す。

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ふだん前面で歌わないすべてのバンドメンバーに、「代わりに歌ってくれてありがとう」と伝えたい。《会場みんながひとつになる》仮想の一体感を、味わいはじめていました。

ラスサビが終わる頃にはもう、最後の合唱パートはステージのみんなが歌ってくれることを完全に信じているので、それぞれに口ずさむわれわれ聴衆の魂も、バンドメンバーに憑依してステージの上に集うわけです。しかもラスサビあとの合唱は、2周ある。

知らず知らず隠してた 本当の声を響かせてよ さあ 見ないふりしていても 確かにそこに 君の中に

リアルタイム視聴4万人の姿は見えないけれど、巨大な熱量が、ステージを経由して身体の中に入ってきました。


オンラインだからこそ可能になる、「寄り」のカメラワーク。練り上げられた立ち回りによる、焦点のコントロール。卓越した演出と、YOASOBIバンドのすべてに感謝します。

つぎのライブ機会では、どんな形で「一体感」を味わうことができるのでしょう。オンラインライブの可能性はまだまだあるはず。もちろん、全身で叫び合うリアルライブを切実に待ちつつも、「声が出せない」制約を逆手に取ったアーティストたちの創造力を、もっともっと楽しみたいです。

写真はKato Shumpeiさんの公式写真と、twitterからスクリーンショットを少しずつお借りしました。

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