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「CDのないCD」をCDショップ店頭で買い損なった話とか #ヨルシカ_創作

発売日。ヨルシカ EP 『創作』Type Aをツタヤ店頭で買ってきました。

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『創作』には、【CDが入っている】普通のType A(赤)と、【CDが入っていない】Type B(青)があって、本当はCDが入っていない方を買いにいったんだけど、TSUTAYA松井山手駅前店はType A(CDが入っているCD)しか入荷していないそうで!発売日に!超残念!!!(素直にTypeAを買いました。ステッカーもらった)

タイプBでは「CDのないCD」というメディアアート作品として、中身が空になったCDを販売する。
サブスクリプションサービスなどで気軽に音楽を楽しめるデジタル時代となった今、”CD”の在り方をCDショップで問う、皮肉が込められた作品となっている。[特設サイトより]

・「皮肉」と称してCDのないCDを売るヨルシカ
「CDというメディアが死にかけの時代に、実店舗でCDの入っていないCDを買う人たちの姿が見たい」と言うn-bunaさん
・CDのないCDをまじめに買いたいファン
・CDのないCDを置いていない店頭
・結果CDが入っているCDを買うファン(私)
・結局Spotifyで聴くファン(私)

(素直に河原町のタワレコに行ったらちゃんと面ディスプレイで両方置いてあるんだけどね……次行ける金曜昼には、先着特典のオルゴールCDはもう終わってるかなあ……送料払って通販で買うのもなあ……)

実際のところ、私はType Aを買ったけど、どのみち楽曲はSpotifyで聴くからCDをリッピングしてスマホに取り込む作業はしないし(mac+Android端末は相性が悪い。YouTube Musicへのインポートがただ面倒だし普段YouTube Musicを使わない)、CDという実体はなくてもアートワーク/パッケージ/特典が楽しめてアーティストに課金できて「発売日に購入」という参加行為ができる、TypeBの販売は《普通に正解》だと思うんですよね。正味、グッズ。

CDショップも、日常的に過去作のCDを買いに行くという使い方は考えにくくて、いわゆるフラゲ日+発売日に足を運ぶイベント会場みたいな場として私は見ています。

店舗も、片方だけしか入荷しないならむしろTypeB(CDがない方)だけにしたほうが売れるんじゃないかと思うけど、それはちょっとCD屋的には自己否定に過ぎるし(笑)、偏った見方なのかな。AとB、売上どっちが行くんだろ。気になる。


さて、楽曲の方は。

◎1曲目『強盗と花束』めっちゃ気に入ってます。『ヒッチコック』みのある軽妙な歌詞回し。『盗作』『思想犯』に通じる露悪的なメッセージ。Aメロとサビとで全く印象が変わる、suisさんの声質の飛距離!

最近コード進行の勉強をしていて、ヨルシカの曲はIV始まりが多いっていうかなりマニアックな分析記事を見たんですけど、その中でサビがVImで始まる奴(ただ君に晴れ、雨とカプチーノ、エルマ……)は、マイナーコードの響きが例外なく刺さっています。『強盗と花束』もその仲間で、6251進行(Dm7-Gm7-C7-FΔ7)っていうやつですね。軽快なメロディから一気にマイナー(短調)の世界に引きずり込むDm。

3番までの歌詞でオチもあるし、延々リピートしてしまう。


『花泥棒』も先日来ずっと聴いていて、きのう当該CM映像が大成建設のオフィシャルに上がっていることに気づいたんだけど、新海誠監督のアニメーションに絡めて、静かに始まるAメロと12秒からのサビの盛り上がり、完璧じゃないか!(サビ頭はちょっと静かで、4拍目から全楽器入ってきてじゃーんっと音圧が上がる。気持ちいい。)

この映像では、手紙からはらりと舞い落ちる桜の花びらが印象的で、『花泥棒』は素直に爽やかな春の歌という感触ですが、MVはもう一つのテーマ——春・桜を「命」に、風を「時間」に見立てた解釈の方に寄っている。ということはミャンマーに送った手紙の主もよもや……(深読み)


あとコード進行の話をすると、1/15配信のn-bunaさんの弾き語り配信の中で、『春泥棒』が瑛人の『香水』に似てるって言われた話を笑いながらしています。春泥棒のAメロ聞いた直後に香水を聞くと確かに似てる(笑)。

※『香水』は451 (F-G-C)、『春泥棒』は456 (B♭-C-Dm)。I⇔VImがトニックの代理コードなので、機能的な構成はだいたい同じです、と。(このへんのメモは別途まとめたい)

どうせこんな456のアルペジオフレーズなんてのは世の中にたくさんあって、(中略)音楽パターン、コード進行、奏法、メロディ、たった12音階の平均律の中でやられていることでしょう?パターンなんてのは全部出尽くしてて、あとはどう自分で表現するかだけなんだよな。(下記映像内のn-bunaさんの語りより)

↓当該語りは39分ぐらいから。しびれる。

ほんとうに最近、他のアーティストの曲ぜんぶうっちゃってヨルシカ関連のやつばかり聴いている。

つづく、聞き覚えのあるフレーズもコラージュされたインスト曲『創作』、去年11月からずっと聴いてる『風を食む』、ノーチラス好きな人にどんぴしゃはまりそうな『嘘月』。ちょうどよい曲数です。


そして、呼応する前作の3rdフルアルバム『盗作』のほうも聞き直していて。いま再発見してヘビロテしているのがアルバム11曲目の『逃亡』です。ジャジーなピアノの音も、suisさんの「ふっふーん」っていうハミングも最高に気持ちいい。下の映像でコラボしているマンガ『よふかしのうた』はこれから読むところです。この映像見逃してた。あぶない。良い。


年初の配信ライブ『前世』をきっかけに、ファンクラブ的スマホサイト《後書き》に入会しました。《後書き》では、バックステージ的な会員限定コラムが読めるほか、「後書きラジオ」なる、n-bunaさんとsuisさんが自由に喋る音声配信を聴けます。これがめちゃくちゃ好きで(特にvol.4、suisさんが勇者でn-bunaくんが女神っていうくだり)。

後書きラジオの中でいろんな曲の裏話が聞けるんですが、『逃亡』は「デモ音源に入っていたn-bunaくんの歌声がよかったので、そのまま残してsuisさんが1オクターブ上をハモって歌う形にした」そう(意訳)。そういう話と、本当に愉しそうに喋る二人の語りを聴いたあとで味わうこの曲は、景色が全然違うんです。勝手に夜散歩が好きなお二人のテーマソングだと思っている。

n-bunaさんは「作品自体の価値と、作品を作った人の人格は全く関係ない」というスタンスで、twitterの個人アカウントも消したりしてるんだけど、こちとら「人を好きになると、その人がつくる作品を前の何倍も好きになる」っていうのはあるんですよね。あと、ライブで聴いたからとか、トークで言及されてる話を聞いたからとか、きっかけと体験と知識で耳触りは変質する。文脈を食ってる感じです。

人、という意味では、「ヨルシカの二人」に加えて、固定のバンドメンバー:下鶴光康さん(Guitar)、キタニタツヤさん(Bass)、Masackさん(Drums)、平畑徹也さん(Piano)——彼らの存在感も、ライブ配信前後でちょっとずつ分かってきたし(オフィシャルバンドスコアに収録されているインタビューを読みたい)、後書きのコラムを書いているStaffさんの感じも見えてきて、いちアーティストというよりは、「拡大家族」的なヨルシカというムーブメント全体を好きになってきている今日この頃です。

『後書きラジオ』は、創作リリース記念企画でまた更新が来るらしい!初のファンクラブ入会なので楽しみにしています。

ライブに行きたい。


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ここからはリンク集です。

◆公式インタビューを柴那典さんが書いています。完璧で優勝。後書きメンバー的には読んだり聴いたりで「知ってる話」もあるんだけど、表でこうやって構成されて出てくるのは柴さんのテキストだからこその信頼感です。


◆ヨルシカコラムと言えば、RealSoundの一角を満島エリオさんがやってるのがすごいなと思っていて、配信ライブ『前世』のめっちゃ詳細なレポも書いてたんですが今回もやってくれました。音楽媒体上でまさに読みたい記事を書いてくれてるっていう感じです。発売日翌日。早い

去年Rockin'on本紙に載ったコラムがオンライン版でも読めるのでぜひこちらを。(このときロキノン買ったのも松井山手のツタヤだった)


◆Type Bを買った人の詳しい記事。こういう詳細感想系の記事もっと読みたいんですよね。見つけたらリンク追加します。


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