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靴磨きトラベラーと本屋

”新生活”という文字が、花びらと一緒に踊る季節になったある日、私は本を積んだ台車をゴロゴロと押しながら思った。

「これから約130人の前で15分間、本の紹介……え? ほんまかいな」

エレベーターを降りて、赤い椅子が並ぶ大宴会場を見て、つぶやいた。

「ほんまやわ」

イベント中の風景

そもそも何故、私が130人の前で本の紹介をさせてもらえることになったのかをお話ししたい。

あれは、確か乃木坂46の「走れ!bicycle」を聞きながら掃除機をかけていた昼下がり。

サビに入り、いい感じに掃除機を走らせていた時、着信音に邪魔された。

いいところやのに誰や!
着信画面を見ると「Sahara Sosho」と表示されていた。
こんな名前の友達おったっけ?
……あ! 先週会った靴磨きトラベラーの佐原総将くんか!
きっと間違って電話してきたんやな、早よ出て伝えな。

こんな感じで電話に出た私に、彼は言った。

「4/8に大阪である僕のアジア編報告会に本の出張販売に来てくれませんか?」

時が止まった。
初めて会ったのは先週だ。
大阪の報告会は彼の全国ツアーの千秋楽。
大切な会のはず。正気か?!

突然ですが、ここで佐原総将くんについてご説明させていただきます。
彼は、靴磨きをしながら世界を旅する”靴磨きトラベラー
※現在はヨーロッパを旅しています。

アジアで靴磨きをする佐原総将くん

靴を磨き、足元を輝かせることでみんなを上機嫌にすることをミッションとしているそう。
世界を旅して得た経験を伝える活動もしているエンターテイナーでもある。


佐原総将くんの各種SNSはこちら↓


彼は確定申告をしに一時帰国し、その際に日本各地を周り、靴磨きの報告会を行っていた。
本好きの彼は、たまに報告会で馴染みのある本屋さんに出張販売をお願いしていた。

彼とは東京の報告会で初めて会ったのだが、実は以前から知っていた。
共通の知人のSNSでよく見かけていたからだ。

彼の投稿を見る度に
「あー、世界に行って、大きい男になります系の人ね。どうぞご勝手に」
と言った感じで全く興味がなく、スルーしていた。
(ひどい言い草でごめんなさい)

東京の報告会も彼の話を聞きたいというより、
お世話になっている本屋さんの出張販売のお手伝いのついでという感じだった。
(もう本当にすみません)

報告会が始まり、気付けば彼の話に惹き込まれていた。
そして、泣いていた。

しっかり考えを持って行動している人だった。
一つ一つの経験をユーモアだけじゃなく、真剣に捉え、伝えられる人が真のエンターテイナーだと私は思っている。
彼はまさに真の領域のエンターテイナーだった。
(本当に誤解しててすみません)

懇親会で自己紹介をさせてもらう機会があり、私は自分で本屋を始めたことをお話しさせてもらった。

彼は、そんな私を応援したいと思ってくれたそうだ。
自分の報告会に本の出張販売で私を呼ぶことで、多くの人に知ってもらい、本を買ってもらう形で応援してくれようとした。

そんな彼の温かいご厚意で、出張販売に行かせていただくことになった。

この出張販売の前に、彼は自分のSNSで私のことを紹介してくれた。
もう、これでもかという程丁寧に。

そして、本好きの友人や、繋がると今後輪が広がると考えた人に個別でメッセージを送り、私のことを話してくれていたようだ。

ただでさえ報告会の準備で忙しいはずなのに、ここまで細かく心を配ってくれた彼には本当に感謝しても仕切れない。

ミルクティーの上で眠る佐原

この写真からもわかるように、きっとかなり疲れていたと思う。
本当にありがとう。

いよいよ本番、本当に130人近くの人の前で本の紹介をさせていただいた。

集合写真
お客さまからいただいた心温まる差し入れ


彼が事前に紹介してくれていたお陰で、あたたかい空気感の中、お客様とお話出来て、本も沢山届けることができた。

お買い上げくださった皆様、本当にありがとうございます!

今回は100名を超える会場だったので、友人にお会計などのお手伝いをお願いしました。

みんな快く引き受けてくれて、本当に助けてもらいました。

「店主はお客様と話した方がいいと思うから、レジはこっちに任せて!」と私が動きやすいように配慮してくれたり、

「この本はね、こういう本なんですよ」と私が別のお客様対応中に、本の紹介までしてくれていました。

本当に心強かったです。
ありがとうございます。

一人歩く帰り道、涙がこぼれました。

「君が失敗したら、みんなにざまあみろって思われるねんで?」

書店員になる前、勤めていた会社を辞める前に言われた呪いのような言葉を思い出した。

ただやりたいことに挑戦するだけで、なんでこんなこと言われなきゃいけないの?

書店に転職して、呪いが効いたかのように5ヶ月で早々に辞めた私は失敗したんだろうか?
ざまあみろと思われるのだろうか?

散々ぐるぐるした結果、自分で本屋をやってみると決めた。
ここで辞めたら失敗で終わるけど、続けたら失敗じゃない。

もう一回。

そもそも失敗なんてこの世に存在しないんじゃないか?
失敗ではなく、それは”経験”になって、今後の成功の材料になるだけなんじゃないか?

迷いながら進んだ日々。
あっという間だった。

応援してくれる人が沢山いた。
本を買ってくれる人がいる。
”貴方のお陰で”
”貴方と出会えてよかった”
と言われることが増えた。

辞めなくて、よかった。

心からそう思えました。

貴方なくして私は存在できません。
これからも続けていきます。

貴方のひとときを、彩れますように

最後に!

佐原総将くんの靴磨きアジア編報告会フィナーレが彼の公式YouTubeで公開しているので、よかったらご覧下さい。

総将くんへ
元気に帰ってきてね!
また必ず会いましょう

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