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「先入観を裏切る」マンション経営で、大塚のまちを変える

「コンパクトなまち」大塚だからこそ、互いに顔が見える、体温を感じられるコミュニケーションが生まれる仕組みを作れるのではないか―

前回は、豊島区、そして大塚を「住むまち」として捉えた時の魅力や不動産事情についてお伝えしました。

各駅にも個性と特長があり、面白いエリアとしてこれからより注目度が上がっていくであろう豊島区。そんな豊島区の中から大塚を、「暮らしたいまち」として選んでほしい。

なぜなら、僕たちは本気でまちを変えようとしているから。大塚を好きだ、いいなと思ってくれる人たちが集まってくれて、自分らしく、快適に暮らしてほしいと思っています。

今回は、山口不動産が力を入れる事業のひとつ、通称「ba03」と読んでいる賃貸マンション「ba apartment」を紹介しながら、賃貸物件の理想形について考えてみます。

賃貸住宅は「買うわけじゃないから無難でも仕方ない」のか?

賃貸物件において、大家と入居者が双方に抱える課題とは何でしょうか。

それはもしかすると、みなさんが住まいを選ぶときに「そういうものだから」と諦めている部分と関係するところかもしれません。

いわゆる「大家さん」と呼ばれる不動産オーナーは、法人・個人に関わらず、物件の購入や建築の際にまとまったお金を投資して、居住者から支払われる家賃収入でそれを回収する、というモデルで事業を行っています。

よって、「物件に対してできるだけ少ない投資で、できるだけ大きなリターンを得たい」という思考になるのは言ってみれば至極当然のことです。

とはいえ、あまりにもお金をかけないと空室は埋まりませんから、入居してもらうために設備を修理・交換する、手頃なビニールクロスで壁をリフォームする等の必要最低限の対策をする、というのが多くの大家さんの考え方ではないでしょうか。

供給する側の多くがそういう姿勢である以上、こういった物件が業界のスタンダードになります。不動産のポータルサイトを開いて、希望条件の物件を検索したとき、どれも似たような物件ばかり並んで見えるのは、大なり小なりこういった理由によるのだろうと思います。

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一方入居者側からすると、満足していないからといって、市場にある物件から”選ばない”わけにはいきません。

だから、ごく一部を除き、賃貸住宅において、「買うわけじゃないから、これで仕方ないか」と妥協して選ぶのは、当たり前の感覚としてあると思います。

賃貸住宅で、「この物件最高!」と自分のライフスタイルや好みに、ぴったり合致した暮らしができている人は、多くはないのではないでしょうか。

仮に僕も最初から不動産業界にいれば、このような状況をごく当たり前のこととして受け入れていたのかもしれません。

しかし実際は、僕が山口不動産に入社したのは30歳手前です。それまでは業界の外にいる、いち消費者として物件を探して、入居して、引っ越して・・を繰り返してきました。

そんな中で僕自身、「間取りのセンス良くないし、コンセントの位置微妙だな・・・」とか「内装高級っぽく見せてるけど、フェイク素材でチープだなぁ」とか、ちょっとしたストレスや物足りなさを感じることが多くありました。

業界の外にいる消費者だった期間が長かったため、業界の常識に対して「そういうものだから仕方ない」と素直に受け入れたくなかったのかもしれません。

なので、自分でやるならば「賃貸住宅に『こんなのがあったらいいな』を実現したい」と考えたのです。

それを形にしたのが、2018年に新築した賃貸マンション「ba apartment(以下、ba03)」です。

ba03のターゲットは、単身の方やカップル、お子さんのまだ小さいファミリーです。部屋のバリエーションは、1K(約30平米/家賃12万円前後)から、2LDK(約55平米/家賃24万円前後)まで全部で8タイプあります。※家賃は2021年9月現在

賃貸住宅業界の常識にとらわれず、「こうだったらいいな」を詰め込んだba03は、大塚にしては少々強気な賃料にもかかわらず、おかげさまで募集開始後すぐに満室となりました。特にカップルやご夫婦向きの1LDKや2LDKの住戸が人気で、退去後も1カ月と経たずに次の入居者様が決まっています。

入居される方にサプライズを仕掛ける気持ちで、「賃貸マンションなのに、すごい!」を実直にやってきた成果が出てきているのかな、と感じています。

目指したのは上質なハードと、「つながり」を生むソフト

入居してくれる人たちの「期待値を超える」こと。これが、空いてもすぐ埋まるマンション経営に重要なことです。もしかしたらこれは、賃貸マンションに限ったことではなく、どんな商品やサービスにおいても共通することかと思います。

先にも書きましたが、現状の賃貸物件は「設備やサービスへの投資はできるだけ抑えたい」大家さんが大多数という状況の中であれば、あえてその逆をやってみよう、と考えました。

設備は分譲マンションにも引けをとらない品質のもの、共用のロビーや廊下、後述するルーフテラスはゆとりをもった広さとデザインにこだわって作って差別化を図りました。

各住戸の内装も分譲マンションのように、様々なテイストの家具に合わせられるよう、フローリング・クロス・室内ドアなどのカラーリングに3パターンのバリエーションを作っています。

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大事にしたのは、僕がいち消費者としてここに暮らしたいかどうか、という視点です。

屋上にはルーフガーデンと名付けた、植栽たっぷりの空中庭園をつくりました。最上階の9階から階段を上ってルーフガーデンに出ると、大塚のまちが一望できて気持ちいい。入居者の方は、休日の昼間に読書したり、夜にお酒と軽食を楽しんだりと、それぞれのスタイルで過ごして頂けます。

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ソフトの面でも、入居者の方々の生活がより便利に、豊かになるようなサービスを用意しています。

まず、ミニクーパーのカーシェアサービス。初回利用登録のうえ、LINEで事前予約していただくシステムで、平日なら3,000円、土日でも5,000円で丸一日利用できます。一般的なレンタカーよりも圧倒的にお得な料金で、いつでも気軽に車を使っていただけます。

今後は、定額乗り放題のサブスクサービスの導入、あるいは利用頻度がさらに増えるようであれば、増車も検討しています。

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シェアカーに採用したミニクーパー。ナンバープレートの数字「・369」は、山口不動産のビジョン「36.9℃のカラフルな日常」にちなんで。

車体を国産の軽自動車ではなく、明るいオレンジ色の輸入車にしたのも、「ドライブするなら、ちょっとテンションが上がるような車にしたいな」という想いを込めているからです。

また、竣工当初よりマンション専用のシェアサイクルを3台用意していましたが、さらにマンション敷地内にシェアサイクルサービス「ダイチャリ」の貸出ステーションを設けて、マンション入居者以外の近距離の移動も気軽にできるようにしました。

一方で、僕らのこうだったらいいな!が押し付けにならないように、ba03に住まれている方たちに、定期的にアンケートを実施して、生の声を集めています。

アンケートに答えてくださったら、「やきとり結火」や「eightdays dining(エイトデイズダイニング)」など、山口不動産が経営やプロデュースに関わっている飲食店のサービス券をお渡ししています。

サービス券をお渡しすることは、アンケートの回収率が上がる効果はもちろんのことですが、入居者の方々の貴重な時間を使ってフィードバックをいただくなら、感謝を形にしてお返しすべき、という考えからです。

有難いことに、このアンケートでは多くの方が、ba03での暮らしに「満足している」と回答していただいています。

それだけでなく、積極的に「〇〇が欲しい」「〇〇がしたい」といった要望を書いてくださる方もいらっしゃいます。「居住者同士交流できる機会が欲しい」との声もいただいているので、コロナが落ち着いたら、ルーフガーデンにビールと大塚の美味しいものを用意してイベントを開催しようと企画中です。

僕たちは良いアンケート結果に満足することなく、こうしたらもっと暮らしやすくなるんじゃないか、楽しくなるんじゃないかと常に考えて、実践していきたいと思っています。

目指すは、入居者とのダイレクトなコミュニケーション

これから山口不動産がba03でやろうとしているのは、新しく入居を希望される方と、ダイレクトにつながること。ビジネス的にいうと、DtoCですね。

これまで、ba03の入居者募集・現地ご案内・契約・鍵のお渡しは、ほぼすべて仲介会社さんにお任せしていました。

これらの業務は仲介のプロにお任せする方がスムーズではあるのですが、この方法だと、貸主として契約者さんと一度も顔を合わせないまま、入居日を迎えてしまうこともしばしば。ba03の魅力、そして大塚の魅力を直接お伝えする機会がありません。

せっかくba03に入居いただくなら、感謝と歓迎の気持ちを直接お伝えして、大塚の街の一員になったことを感じてもらいたい。大塚の街を存分に楽しんでほしい。

そこで、この秋からは、ba03専用のホームページを作ったり、入居者さんとの連絡ツールとしてLINEを導入したり等、ユーザーさんとの直接的で気軽なコミュニケーションを図れるような施策を進めていくことにしました。

こうした施策によって、街と物件の魅力をダイレクトに伝えられるだけではなく、山口不動産が「顔の見える貸主」となることで、入居者さんは「大塚の街に〇〇が欲しい」「ba03で〇〇をしたい」といった率直な声を届けてくれる。

僕たちはその声をすぐに反映して、住みやすさを改善していくことで、入居者さんは「自分たちが声を発すること、主体的に関わることで、住まいと街がより良く変わっていく」実感を得られる。

大袈裟じゃなく、この循環を作ることが、まちが変わっていく原動力になる、と信じています。


次回は、まちを変える方法について。普遍的な正解なんて到底僕には言えませんが、僕たちはこうやって変えてきたよ、ならば語れます。行政との協力が不可欠なまちづくりと、変わらないと言われて久しい政治。実は、よく似ている気がします。

大塚のまちをカラフルに、ユニークに

大塚が変わるプロジェクト「ironowa ba project(いろのわ・ビーエー・プロジェクト)とは?(▼)

編集協力/コルクラボギルド(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)

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