散文【駆け落ち】
「もう会えないね。みんなに反対されて、あなたの仕事も大切だしね・・・・・・。どうしようか、私たち」
「ぼくはずっと仕事に走り続けてきた。時にスピードを上げたり、傾斜をつけて自分に負荷をかけながらね」
「これからも走り続けるつもり?」
「いや、ぼくは気づいたんだ」
「何に気づいたの?」
「いくら走っても、ちっとも進んでないことにだよ」
「どうして? あなたは努力して結果を出してきたじゃない」
「ぼくはランニングマシンの上で走っていたのさ。いつも同じ場所で同じ景色を見ながらね」
「それがあなたの選んだ幸せじゃなかったの? じゃあ、ランニングマシンを降りるの?」
「ああ、降りる。駆け落ちしよう!!」
「後悔するわよ」
「ふ、ここで君を失えば一生後悔することになる。行こうか」
「うん」
終
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