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SS【ぼくのいる世界】


この世界は仮想現実である可能性があると、化学の先生が言っていた。

自分の意思で動いているつもりが、実はオンラインゲームのキャラクターのように操作されている可能性もあると言う。

目にしている物さえも仮想現実の中にあるデジタルデータにすぎないかもしれないと先生は言った。


その先生はある日突然いなくなった。


月日が過ぎ、中学校の卒業式を迎えたぼくは、体育館で校長先生から卒業証書を受け取り、席に戻った。

椅子に座った瞬間に目の前が真っ暗になり、気がつくと再び体育館のステージの上を歩いていた。

校長先生から卒業証書を受け取り、席に戻った。

二回卒業証書を受け取ったというハッキリとした記憶は無いが違和感はある。

ぼくはその後、それを何十回も繰り返していた。


ぼくに卒業証書を渡そうとする校長先生の顔は、よくみると化学の先生を太らせただけだ。

思い切ってステージの上から後ろを見渡すと、生徒たちの椅子が消えたり現れたりしている。

それでも生徒たちは体勢を崩すこともなく、僕の方を見ている。


ぼくは何もかも嫌になって卒業証書をクシャクシャにして体育館の床に叩きつけた。

すると体育館は真っ暗になり世界はメンテナンス中になった。


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