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SS【タコパ】


食いしん坊のタケルくんがお母さんに何か訴えています。


「お母さん、来月の誕生日はタコパしたいな。もちろんケーキもね」


タコパとはたこ焼きパーティのことです。お母さんが止めなければ、おやつの時間に三十個入りの冷凍タコ焼きも一人でペロリと食べてしまうタケルくん。もちろんそのあとごはんも食べて、おかわりもします。

いつもは冷凍のものをチンするか、お母さんがお店で買ってきます。

しかし先日、同じクラスで仲良しのミキちゃんがこんなことを言っていました。


「いつも買ってくるの? 私はいつも材料を買ってきて自分で作るわよ」


それを聞いたタケルくんは家でもしたいとお母さんに訴えました。

きっと自分で作ると余計においしくなるに違いありません。

お母さんはタコ焼き器と材料を買ってくれました。あとは誕生日に冷凍のぶつ切りタコが届くのを待つだけです。タケルくんは楽しみでしかたなく、タコの動画をたくさん観て勉強しました。


いよいよタケルくんの誕生日になりました。小学生で迎える最後の誕生日です。

お腹を空かせたタケルくんが学校から帰ってテレビをつけると、ニュースで世界のあちこちに宇宙人が攻めてきたと伝えています。

恐ろしいことにその宇宙人たちは、複数の長い足を人間に巻き付け、動けなくして食べてしまうというのです。

タケルくんは「その長い足は食べれるのかな?」と首をかしげました。

その時、玄関をノックする音が聞こえました。

ノックというより乱暴に叩いているような音です。

お母さんはまだ仕事で、今はタケルくん一人です。

タケルくんが玄関の扉を開けると、そこにはタコのような姿をした宇宙人が立っていました。背丈はタケルくんよりずっと高いです。



それからしばらくしてお母さんが帰ってきました。


「タケル、タコ届いた?」


「うん、届いたけど冷凍じゃなかったよ。それにカットしてなかったよ」


「え?」


それから少しして本物の冷凍タコが届きました。

タケルくんはすでに長いタコ足でたらふくタコ焼きを作って食べていました。

もうお腹はお母さんがビックリするくらいパンパンです。

その夜、タケルくんは珍しくご飯をほとんど食べずに、お腹が痛いと言って横になってしまいました。でも誕生日のケーキはちゃんと食べました。

お腹が痛くなっても、そこは鉄の胃袋タケルくん。翌朝には大好きなカレーをおかわりして食べました。

朝のニュースは宇宙人の話題ばかりです。なんでも宇宙人の足は八本あって、目と目の間に急所があるそうです。テレビには捕獲された足が七本のタコが映しだされました。それを見ていたタケルくんは言いました。


「あっ!! 昨日の逃げたタコ!! でも、あんまりおいしくなかったな」


タケルくんはタコの目と目の間を包丁で刺してタコを弱らせたのです。タコは足を切られるわ、急所を攻撃されて死にそうになるわで、身体を白く変色させて逃げたのでした。


お母さんは「なるほど!!」と言ってポンと手を叩きました。


「でもおいしくないならダメね」と言うと、それに同意したタケルくんは静かにうなずきました。


平和が一番。それにおいしいごはんもあれば言うことなしです。


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