SS【うるう年】454文字
「君のことはなんて呼べばいい? 君のニックネーム教えてよ」
「そんな気の利いたものはないよ。昔からぼくは誰からも呼び捨てにされ、飽きたら捨てられた」
「ろくでもない相手ばかりと付き合ってきたんだね。じゃあ年齢は?」
「君よりずっと年上さ。長生きしてるから色々な経験をしてきたよ」
「たとえば?」
「力自慢にねじきられそうになったことがある」
「昔ぼくもやられたことあるよ。腕をぞうきんみたいに絞るやつだろ?」
「いや、身体ごとだよ。それで死んだ仲間もいた」
「あはは・・・・・・まさか」
「ぼくたちを手裏剣みたいに投げるやつもいた。ぼくはそれでキュウリを切らされた。ちなみにぼくたちは五十二枚で一組なんだ。それは一年が五十二週だからさ。四種類の絵札は春夏秋冬を意味してる。さらにカードの数字をすべて足すと三百六十四になるんだ。そこにジョーカーを一として足すと一年の日数になるんだ」
「やっと君の名前が分かったよトランプくん。でもぼくの持ってるトランプにはジョーカーが二枚入っていたよ」
「ラッキーだね。それは四年に一度の幸運さ」
終
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