![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72529888/rectangle_large_type_2_e03ea0a067185bdaef23cd45fcc748b5.png?width=1200)
SS【転生】
ぼくは久しぶりに死役所へとやってきた。
前回来たのは他界したばかりの時で、五十年前くらいだろうか。
人は亡くなると天国にある死役所にやってくる。
それから無数にある層のどこかに振り分けられる。
そこで生活しながら転生のチャンスを待っているのだ。
転生する時は自分で色々と決めることができる。
生まれる国、性別、親、知性、身体能力などを決めれる。
とはいえ万能とはいかない。
やり直しのできない抽選で決められた数値を、各能力に振り分けるイメージだ。
均等に振り分ける人もいれば、特定の能力に極振りする人もいる。
ぼくは忍者に憧れていたので、抽選で得た少ない数値のほとんどを敏捷性と器用さに振った。
生まれ変わってから二十年が経ち彼女ができた。
彼女はせっかく抽選で得た多くの数値を筋力に全振りしたらしく、怒るとフライパンを曲げて「こうなりたいの?」と脅してくる。
彼女のお母さんは運に全振りしたらしく、宝くじで高額当選し、そのお金で家を建てた。
彼女のお父さんは少ない数値を均等に振り分けたらしく、何をやっても人並み以下の成果しか出ない。
そもそも振り分けれる数値がどれだけかは抽選で決まるので、数値が少なければ何かに極振りして他を捨てるしかなくなる。
ぼくは振り分け方を失敗した。
知性に多く振っていれば、フライパンを曲げる彼女と一緒に暮らすこともなかっただろう。
ただ、たまに彼女がゴリラのように暴れ出した時に、サッと避けることができるのは不幸中の幸いである。
終
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?