見出し画像

SS【転生】


ぼくは久しぶりに死役所へとやってきた。

前回来たのは他界したばかりの時で、五十年前くらいだろうか。

人は亡くなると天国にある死役所にやってくる。

それから無数にある層のどこかに振り分けられる。

そこで生活しながら転生のチャンスを待っているのだ。


転生する時は自分で色々と決めることができる。

生まれる国、性別、親、知性、身体能力などを決めれる。

とはいえ万能とはいかない。

やり直しのできない抽選で決められた数値を、各能力に振り分けるイメージだ。

均等に振り分ける人もいれば、特定の能力に極振りする人もいる。

ぼくは忍者に憧れていたので、抽選で得た少ない数値のほとんどを敏捷性と器用さに振った。



生まれ変わってから二十年が経ち彼女ができた。

彼女はせっかく抽選で得た多くの数値を筋力に全振りしたらしく、怒るとフライパンを曲げて「こうなりたいの?」と脅してくる。

彼女のお母さんは運に全振りしたらしく、宝くじで高額当選し、そのお金で家を建てた。

彼女のお父さんは少ない数値を均等に振り分けたらしく、何をやっても人並み以下の成果しか出ない。


そもそも振り分けれる数値がどれだけかは抽選で決まるので、数値が少なければ何かに極振りして他を捨てるしかなくなる。



ぼくは振り分け方を失敗した。

知性に多く振っていれば、フライパンを曲げる彼女と一緒に暮らすこともなかっただろう。

ただ、たまに彼女がゴリラのように暴れ出した時に、サッと避けることができるのは不幸中の幸いである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?