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SS【悪魔召喚】
ぼくが中学生になってすぐにおじいちゃんが亡くなり、本を読むのが好きなぼくは形見分けで沢山の本を手に入れた。
おじいちゃんの最初の奥さんは若くして亡くなったらしい。
二人目の奥さんであるぼくのおばあちゃんは百歳近いが、階段を三段飛ばしで駆け上がる鉄人だ。
もらった本の中でも長方形のブリキ缶に収まっていた本はかなり古く、日焼けして茶色に変色していた。
どれも悪魔に関するタイトルだ。
悪魔とのつき合い方。
禁断の悪魔召喚。
悪魔図鑑。
一番下になっていた本のタイトルは、「悪魔を呼ぶコツ」と書かれていた。
おじいちゃんは悪魔に強い興味があったらしい。
興味があるのはいいが、本当に現れたらどうするつもりだったのかと思いつつも、好奇心は膨らむばかりで、ぼくは徹夜で悪魔を呼ぶコツを読破し、後日、そこに紹介されていた召喚術を試してみることにした。必要なアイテムはお小遣いで揃えた。
三面鏡を三つ向かい合うように配置し、その真ん中にロウソクを立てる。
深夜零時にそのロウソクの火を灯して悪魔の名前を呼ぶのだ。
ぼくは勇気を振り絞り、恐怖と戦いながら召喚術をとりおこなった。
予定では三面鏡が創り出す無限の廊下の奥から悪魔がやってくるはず。しかし何も起こらなかった。
当たり前といえば当たり前かもしれない。
ぼくは内心ほっとした。
見てみたい気持ちはあるが、本当に悪魔が登場しても対処できないからだ。
そのことをおばあちゃんに報告すると、おばあちゃんは笑ってこう言った。
「現れやしないよ。本には書かれていないけど、その召喚の儀式には生け贄がいるんだよ」
「生け贄って?」
「生きた若い人間さ」
「えーー!!」
「それにね、呼び出した悪魔が帰ってないんだから呼んだって来やしないさ。もう居るんだから」
「え? どこにいるの? おじいちゃんが呼んだの?」
おばあちゃんはぼくをジッと見つめた。
ぼくもおばあちゃんをジッと見返すと、一瞬、おばあちゃんの目が不気味に黒くよどんだ。
おばあちゃんは静かに口を開いた。
「どこに・・・いるかだって? お前の目の前にいるじゃないか」
終
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