見出し画像

SS【浮遊】


夢の中で空を飛ぶ感覚に似ているだろうか。

私は広い空を自分の意思で飛ぶことができる。

鳥のように一生懸命羽ばたかなくても、まるで自身が風かのように自由に飛べる。

ただ時間制限はある。

小銭を入れたら動く子どもの乗り物のように、いずれ、時間がきたらピタッと動かなくなるだろう。


私はふと我に返った時、広いと思っていたその空が、本当はとても小さいことに気づいた。

自分がカゴの中の小さな鳥であることに気づいたのだ。

しかし、カゴを飛び出し窓から逃げ出す勇気は無い。

だから私は飛んでいるのではない。飛んでいるふりをして、ただプカプカと浮遊しているだけ。



時間はまだある。

私に持って生まれた羽がないというのなら、羽の代わりになるものを作るまでだ。

残された時間でどこまで飛べるか、私は今、小さなカゴの中で考えている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?