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SS【富裕層になりたい】373字

人生で最終的になりたい理想の姿と大雑把な個人情報をテキスト入力する。それだけで、あとはAIがネット上に残されたその人の情報を頼りに理想に近づくための最短方法を提案してくれる優秀なチャットボット。

三年前。ぼくは元気なうちにこの優秀なAIと巡り会えたことに歓喜し、ろくに注意書きも読まずに使用した。雑に「富裕層になりたい」とだけ入力したのだ。するとわずか数十秒で富裕層になるためにやるべきタスクが生成された。

ぼくは違和感と孤独感を覚えながらもAIが生成した富裕層になるためにタスクを消化し続けた。寒いと言われようが苦笑いされようが、ぼくは親父ギャグを言い続けた。

それから三年後。気づけばぼくは誰よりも浮いていた。

ぼくが読まなかった注意書きにはこう書いてあった。


※ 変換ミスには十分にお気をつけください。


「浮遊層になりたい」

ぼくは誰よりも浮いていた。



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